2013年11月30日

お疲れさま

平成4年5月6日 川崎会計は現在の場所に事務所を構えた

そして その年の4月から彼女は我々の仲間になった

あれから21年半 彼女は総務担当として誠実に勤め上げ

この11月末をもって 円満退職することとなった

その長年の功労に対し この場を借りて改めて御礼を言いたい

「長い間お疲れさまでした 君の事務所に対する多大なる貢献に
心から感謝します 本当にありがとう!」


ウチの事務所の女性職員で20年以上勤務したのは、所長の奥方を除いては後にも先にも彼女が初めてです。所長代理をさせていただいている私は総務課長も兼任しているので、直属の部下として彼女を21年間見てきました。

彼女は入社当初、人前で話をすることもできないほど非常におとなしい性格で、そんな消極的な姿勢が仕事に向いたときは、私が度々厳しい指摘をして何度も泣かしてきたものです。

私は仕事の上では男性だからとか女性だからという区別はしないので、これまで若い女性職員に対しても、言うべきことは遠慮なく言ってきました。

従って、もちろん根は優しい男?(笑)ですが、職場で部下の女性が泣こうがわめこうがまったく気にはしません。というより、それが彼女らの教育を任された私の使命だと捉えていたので、敢えて厳しい態度で指導してきたつもりです。

ただ、私が厳しく指摘してきたことは、そのほとんどが挨拶、掃除、電話応対、接客、時間厳守などのビジネスマナーに関するもので、気持ちとしては、仮に彼女らがウチの事務所を離れて他の職場に行ったとしても、社会人としてどこでも通用する人間になって欲しいという願いからです。

ですから私は、ご実家から通う新卒の女性職員に対して先ず初めに必ず言うことは「明日から30分早く起きて自分でお弁当を作ってきなさい」でした。

今思い返してみても、これまで勤務した女性職員のほとんどが、一度は私に泣かされたことがあると記憶していますが、その中でも涙した回数が一番多かったのは件の彼女ではなかったかと思います。


そんな新人の時代を過ぎた頃、仕事の段取りに関して私がした指摘に対し、彼女が私に放った言葉を今も鮮明に覚えていますが、ある意味これがその後の彼女の仕事に対する姿勢を作り上げてきたきっかけになったのではないかと思います。

「それは吉田さんが優秀だからできるんですよ。私みたいな能力のない人間には無理です!」

半ばキレ気味で言い放ったと思いますが、私は彼女にこう返しました。

「そう思ってるんだったらどうすればそんな自分でもできるのか、その方法を自分で考えて実践していくのが仕事ってもんだろう」


それからです。彼女は誰に指示されたわけではなく、自分が担当する重要な業務の一つ一つに自ら作成したチェックリストを設定し、そのリストをチェックしながら仕事を進めることで、ミスや漏れがないように仕事を仕上げるようにしました。

私がそんな彼女の姿勢にいたく感心したのは、自分が任された主幹業務に対する他の職員からの指摘や提案事項を、彼女は独自に用意した専用の大学ノートに書き留めるようになり、その上で彼女が自ら設定したチェックリストにその項目を追加するなどして、何年にも亘って各チェックリストを更新し続けてきたことです。

これが彼女の仕事のスタイルとして定着し、彼女のノートは膨大な量のマニュアルとなり、更新してきた数々のチェックリストは、今や総務課の財産となりました。

そして、20年を経たとき、全員が認めるその責任感の強さは彼女の人間としての大きな魅力となり、私たちにとっては事務所の縁の下の力持ちとして無くてはならない存在となっていたのです。


ここ二~三ヶ月、彼女が長年実施してきた総務課の月間業務の引き継ぎを受けてきましたが、こんな煩わしい細かい業務を彼女一人で担ってきたのかと、恥ずかしながら先のチェックリストの存在と併せ、今さらながらに驚いてしまいました。

ここまで仕事が分かっている20年選手が居なくなるのは、事務所にとって、中でも私にとっては正直本当に痛いことですが、彼女にとっては初めての出産を控えての此度の退職です。

これからは一人の母として、家庭で自身と家族の幸せを掴んでくれることを心から願い、そして応援していきたいと思います。



最後にもう一言

「ワタシが20年も教育してきた君なんだから

絶対幸せになれるはず(^_-)b

長い間 本当にお疲れさま!」





2013年10月31日

根っこにあるもの

「誤表示ってどういうこと? 明らかに偽装でしょ!」

不法行為に滅法厳しいカミさんが声を荒げる

「それより従業員が無知だったとかトップが平気で言うかね」

謝罪と称した記者会見での情けない言い訳に
ふだん穏やか?なワタシも流石に呆れかえった

「中国産混ぜたそばを信州蕎麦って表示してたんだってよ
バカにするのもいい加減にしろってもんだよね!」

ご当地が誇る名産まで偽装されたとあって
正義の味方の怒りは頂点に達するのだった( ̄▽ ̄;)


先般、関西を代表する阪急阪神ホテルズが運営する八つのホテルレストランで、メニュー表示と異なる食材が使用されていたというショッキングなニュースが飛び込んできました。

しかもその虚偽表示された料理の数々は、過去7年以上にわたり約8万人近いお客様に提供されてきたといいます。


今回この阪急阪神ホテルズの偽装問題の発端となったのは、今年6月、東京はグランドプリンスホテル高輪などを運営するプリンスホテル系列4ホテルが、利用客からの指摘を受けて調査した結果、計18施設27店舖で66品目の虚偽表示が発覚したことに起因します。

これを契機に阪急阪神ホテルズが系列ホテルを調査してみたところ、今回の問題が発覚したとのことです。

冷凍保存の魚を「鮮魚」であるとか、普通の青ネギ白ネギを「九条ネギ」であるなど、その虚偽表示の内容はマスコミで散々報道されているので割愛したいと思いますが、私がホントに呆れてしまったのはこの事実に対するホテル側の対応でした。


事件を公表した今月22日、先ず記者会見に臨んだのは、代表取締役社長ではなく、同社の総務人事部長と営業企画部長でした。

事の重大さをどう受け止めていたのか分かりませんが、会社の最高責任者である社長が、お客様を欺いているのではないかという疑惑を含んだ大きな問題に姿を現さない、この初動対応から既におかしいと思われて然るべきです。

そして会見に臨んだ総務人事部長は「メニュー表示と食材が合っているかチェックする意識が欠落していた」とか「担当者間で意思の疎通ができていなかった」など、意識や意思疎通の欠落による誤表示で、意図的な偽装ではないことを強調しました。

しかし、もう一方の営業企画部長は、調理、配膳担当の従業員らが虚偽表示を知っていながら黙認していたケースもあったことを明らかにし、その上で最後に言った言葉が「お客様の反応を気にするあまり(メニュー表示の)筆が滑ってしまったのではないか」でした。

「筆が滑る…?」本人は釈明のつもりで言ったようですが、この場でよくそんな言葉が出てくるなと、この会社の管理職クラスのレベルの低さに驚いてしまいました。


当然に彼らのそんな会見は、私だけでなく世間から強烈な批判を受け、二日後の24日、これはいかんとばかりにやっと社長が記者会見に臨んだと思ったら

「信頼を裏切ったお客様には心よりお詫び申し上げます」と言った舌も乾かぬうちに
「原因は従業員の認識、知識不足にあり、意図的に表示を偽って利益を得ようとしたのではなく、あくまで誤表示だと思っている」と言い放ちました。

更に「誤表示を知りながら放置した事例はない」と前日の企画部長の発言を撤回し、「従業員の法令順守に対する自覚が足りなかった。その責任はそれを放置した会社側にもある」と、従業員に大半の責任があると受け取れる発言を繰り返しました。

会社の最高責任者である社長が、自社の従業員に責任転嫁する発言を平然と述べるその態度に、私は開いた口がふさがりませんでした。

そして、その後は皆さんもご存知の通り、同社には消費者からの怒りの電話などクレームが殺到し、こういった社会の批判に後押しされる形で、結局今月28日に最高責任者である社長が辞任に追い込まれるという事態に至りました。


今回の阪急阪神ホテルズの対応を整理してみますと

①会社内で問題が発覚し、管轄する消費者庁に報告したのが今月7日。

②それから二週間も経った22日に同社のホームページのみで公表。

③世間の批判を受けて急遽開いた記者会見に出席したのは部長クラス。

④一人は「偽装」ではなく「誤表示」で意図的ではないと強調。
一人は従業員が黙認していた、筆が滑ったなどと矛盾する発言。

⑤2日後にやっと社長が記者会見に臨むが、「責任は社員にある」「黙認していた事実はない」と更に混乱を招く発言。

⑥この態度に反省と謝罪の念がないと痛烈な社会批判を浴びる。

⑦4日後「偽装と受け止められても仕方ない」と社長が引責辞任。

この結果、最後は社長が辞める、利用者にお金を返すといった行動に出たわけですが、そもそも何故この会社に虚偽表示問題が起こったのか、その真の原因を考えてみると、経営陣が自らの保身を優先し、後手後手の対応しか採ることができなかったという、脆弱な経営体質に拠るものと言う他ありません。

5年前、同じ産地偽装問題などで廃業に追い込まれた老舗船場吉兆も、記者会見でパート従業員が独断でやったなどと信じられない嘘の発言をした結果そうなったことを、同業者として教訓を得ながら見ていたはずなのに、此度同じ轍を踏んで信頼を失墜してしまった阪急阪神ホテルズの再建も、きっと相当に厳しいものになるでしょう。



私たち一般消費者は、このような問題が起こったときに本当に知りたいことはその根っこにある事実です。今回の阪急阪神ホテルズの虚偽表示問題でも、仮にその根っこの部分に彼らが否定していた「意図的にお客様を偽って利益を得ようとしていた」事実がもしあったのなら、最高責任者である社長が真っ先にその恥ずべき事実を正直に公表し、すべての責任は己自身にあると表明したうえで社会に対して命を懸けて謝罪していたら、同じ引責辞任をしたとしても、会社のその後の経営展開は大きく違ったものになるのではないかと思うのです。


私たちの仕事は、実はそんな心のせめぎ合いと常に闘っている経営者の方々とのお付き合いです。時には「このくらい大丈夫」とか「このくらいみんなやってるよ」と、誘惑に敗けそうになる局面に対峙することもあります。

そんなとき、自分の根っこにある本性を思い出して欲しいのです。

人を欺いてもいいなんて本気で考えてる人間なんて絶対にいません。

だから、人は心の根っこに余計なものを持たないで
いつも空っぽにしておくことが大事なんだと思います。

公明正大!正々堂々! その方が人生気持ちいいじゃないですか!



「もう何~ この社長とか言う人 あり得ないよね~」

「まあ 辞めりゃぁイイってもんじゃないけどね…」

「中国産を信州そばって ホント許せないわ!」

「え? まだそこ? あんまこだわらない方がいいよ」

「え~ だって腹立つでしょ!」 

「時は流れるんだから 心も一事に留めないでリセットしてかないと」

「ふ~ん そういうもん?」

「ああ そういうもんだ(笑)」


2013年10月6日

差し向かい

「ごめ~ん お待たせしますた(笑)」

夕方急な仕事が入り 待ち合わせの時間に
小一時間遅れて 娘がやってきた

「おお お帰り~ しょっちゅう予定外の仕事入って大変だなぁ」

「うん まあそういう業界だから仕方ないよ」

業界などという言葉をさらっと発するようになった娘と
彼女が住む神奈川のとある町で久しぶりのデート?である


「さあ どこに行く? 寿司にする? それとも焼き肉か?」

「海鮮でもいい? お父さんを連れてきたい店があるんだけど…」

「へ~ 海鮮屋さんかぁ いいねぇ じゃそこ行こう」

娘に飲み屋へ連れてってもらう歳になったんだな~なんて(笑)




先月、照明技師の仕事をしている娘が住む神奈川へ行ってきました。
娘と二人だけで食事をしながら時を過ごすのはこれが二度目です。

最初は今から一年半前、彼女の就職先が決まって専門学校を卒業し、帰省していた我が家から都会へ旅立つ直前でした。

寿司が喰いたいというので、いつもの回転する店ではない馴染みの寿司屋に赴き、二人でカウンターに座ってやたら旨くて高い肴をつまみに新鮮な時間を共有したことを覚えています。

そのときは、これから社会に出る娘に対して、仕事への向き合い方であるとか、一人暮らしをする上での一般常識のような話をしていたので、話し手の親父と聞き手の娘というシチュエーションでした。

二度目の今回は、逆に娘の方から現在の仕事の悩みであるとか、恋愛や結婚に対する考えなど色んな話が次々に飛び出して、明らかに話し手の娘と聞き手の親父と言った構図になっていました。

しかし、娘とのこの二回のデートは私が想定していた通りの流れでした。

私は子どもたちがそれぞれ家庭を持つまでは、一対一の差し向かいでじっくり対話する時間を年に一度は持つようにしようと思ってそうしてきました。

そのきっかけは、今から七年近く前、やはり就職が決まった長男が専門学校を卒業する直前に、当時二十歳になった息子と初めて酒を酌み交わしたときのことでした。
(詳しくは2007年3月「乾杯」http://dairicolum.blogspot.jp/2007/03/blog-post.html)

初めは単純に息子と酒を飲むことを夢に見ていたオヤジの我儘を叶えるだけのつもりだったのですが、このとき長男が私に向かってよく話すことに先ず驚きました。

私の中では無口な高校時代の印象のままフリーズしていただけに、うるさいくらいによく喋っていた幼い頃に戻ったような饒舌ぶりに本当にびっくりしたものです。

そして時間が経つに連れ、「お母さんには話してないんだけど」や「そのときお父さんはどう思ってたの?」のように、私が思いもよらなかったことや、そこは話したことなかったというような会話が途切れることなく続くのです。

当時の私にとってそれはまったく想定外のことでしたが、帰りの電車に揺られながら、親子にとってとても貴重な時間だから、子どもたちとは毎年この差し向かいを続けて行こうと思うようになっていました。


人はどんなに気の置けない仲間内であっても、それが三人以上のグループになると本当の本音は話さないものです。

話さないというより、通常グループの対話というのは意図するとしないとに関わらず、何らかのテーマに対する差し障りのない範囲での個々の意見に喜怒哀楽するという形で成り立つので、本音を話す機会、必要がないといった方が正解かもしれません。

それは家族の場合でも同じで、全員集合して一杯飲りながらワイワイやるのはとても楽しいひとときであることは間違いないのですが、大人になるに連れ、夫々が社会に出てからの経験に基づく自信や不安を持ち合わせるようになるので、家族といえども、いや家族だからこそ心配かけまいとか恥ずかしいからという心理が働き、全員がそろうような場では敢えてその部分には触れないようになります。

これは秘密を持つとか、正直ではないという問題ではなく、グループだからこそ話せることもあれば、一対一の差し向かいでなければ話せないこともあるという至極当然のことなのです。

そして差し向かいの場面でこそ、人は自身にとって大切な話をするものです。

ビジネスの世界でも、上司と部下の差し向かいでの面接を社内コミュニケーションの一環として取り入れている企業は数多くあります。

ただ、このビジネスの世界での面接は、上司と部下の信頼関係が成り立っていないと所詮グループ対話の域に留まり、差し向かいから生まれる本来の効果は期待できないのではないかと思います。

しかし一方で、互いの信頼関係を育む最たる方法が、その差し向かいでの対話であることも間違いありません。

親子でも会社でも友達の関係でも、基本は普段からどんな関係性を育んでいるかが問題です。日々の挨拶や、何気ない一言の積み重ねを土台にした差し向かいの時間を大切にすることで、人と人との良好なコミュニケーションは培われていくのではないでしょうか。




「近くのホテルとれなかったんだが お前のアパート泊まれるか?」

年頃の娘ゆえちょっと気を遣ってビジネスホテルを当ったが
連休中ということもあってどこも空きがなかった

「大丈夫だよ 別にホテルなんかとらないでウチに泊まればいいじゃん」

娘にとってはオヤジの気遣いなど余計なお世話だったようである

「そうか じゃ一晩厄介になるけど頼むな」


そして 帰宅した私にカミさんが一言

「父親を自分の部屋に絶対入れない子も多いんだよ~
ウチはお父さんのことを信頼してるってことでしょ」

「あら そういうこと?」



2013年8月31日

本当に必要な支援とは

「サラリーマンが日曜に研修って…ホントなの~?」

晩酌中にニヤニヤしながらカミさんが囁きかけてきた

「ホントって ど、どういうことだよ」

やましいことは何もないのだが 何故か態度と表情がぎこちない

「研修とか言って ホントは誰かとどっか遊びに行ってたりして~?」

「オマエねぇ 二十代三十代の若僧じゃあるまいし…
今さらそんな元気はありませんよ 何なら一緒についてくる?」

「アハハハ じょうだん じょうだん(笑)
でも日曜はね やっぱりあなたにいて欲しいのよ」

何だ たまには可愛いことを言うじゃないか(微)

「ウチの仕事をやってくれる人がいないと困るのよ」

「そっちか~~い!!」

品行方正なダンナをつかまえて まったく失敬なカミさんである(泣)



8月25日~26日の日曜、月曜の二日間に亘って、長野市で開催された「経営革新等認定支援機関向け『経営改善・事業再生』研修会」に出席してきました。

今からちょうど一年前の平成24年8月30日「中小企業経営力強化支援法」という法律が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。

この認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定の基準を満たす個人、法人等の事業者を、経営革新等支援機関として国が認定することにより、 中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するために制定されたものです。



現在、各地の商工会、金融機関、民間コンサル会社、そして我々のような会計事務所など、既に一万社近い事業所が支援機関として認定されています。


今年3月の中小企業金融円滑化法の終了を受け、円滑化法を適用して事業資金の新規融資や既存借入金の返済条件変更(リスケジューリング、通常「リスケ」と言われます)などを受けた中小企業に対して、もし各金融機関が円滑化法終了に伴って貸し渋りや貸し剥がしを行うようなことがあれば、中小企業の倒産件数が急激に増加する可能性があるため、そのような混乱を招くことがないように、金融支援の継続と中小企業の経営改善を全面的にバックアップするために設置されたものです。

国(内閣府、中小企業庁、金融庁)は金融円滑化法の期限到来に当たり、各金融機関に円滑化法終了後も引き続き中小企業の経営支援を強化するよう促しました。

しかし、現在大人気のTBS系ドラマ「半沢直樹」のように、一金融機関の融資課長が傾きかけている一企業の再建にすべてを投げ出して取り組むなどというのは現実にはかなりハードルの高いことで、このドラマ自体は堺雅人の眼光鋭い表情を見ているだけでもとてもおもしろいのですが、そこはあくまでフィクションの世界の話しです。

そこで現実の社会では、金融機関だけに中小企業の経営支援を託すのは荷が重いので、他の認定機関と連携して経営改善計画書を策定する体制を構築するとともに、その改善計画に合致したリスケ等の金融支援を実施することを求めています。

また、実際に自社の経営を改善し、なおかつ金融支援を受けるための5年から10年に亘る中期経営計画を、金融機関並びに認定支援機関の協力を受けながら策定するということは、それなりの費用と時間がかかるのも言うまでもありません。

そこで国は、その改善計画策定にかかる費用の3分の2(上限200万円)を補助する施策も打ち出しています。


今回の研修は、この支援機関としての経営改善計画書の策定方法、そして単に計画書の作成に留まらず、支援企業のその後の経営状況のモニタリング方法などのノウハウを学ぶものでした。

業種がら、私らは経営計画の数値目標を整合性をとりつつ積み上げることは、元となるデータや情報さえあればさほど苦もなく策定することはできます。

ただ、この仕事を長くやればやるほど、単なる数字の帳尻合わせが何の役にも立たないことを強く感じるのも事実です。

机上の空論といえるような現実から離れた理想的な数字を何の根拠も持たずに積み上げ、例えば金融機関の心証を良くするためだけの計画を立てたところで、言うまでもなく実際の経営には何の成果ももたらしません。

ウチの事務所がこの経営革新等認定支援機関の認定を受けたのは昨年12月のことですが、現在まで当事務所のクライアントはもちろん、連携すべき金融機関等からも経営改善計画書の策定依頼を受けたことはなく、今回の研修などでご一緒する他の支援機関の方々との情報交換でも、実際に経営改善計画書を策定したという事例は身近なところではほとんど聞きません。確かにこれだけボリュームのある経営改善計画書を策定するとなると、中小企業と謳ってはいるものの、それなりの規模を持つ企業でないと厳しいのかなと正直思います。

金融機関が会計事務所や商工会など他の機関と連携して中小企業の経営改善の支援をするというコンセプトはとても画期的で素晴らしい政策だと思います。しかし、それがある一定以上の事業規模を持つ企業だけしか対象にならないとしたら何とも残念なことです。

この仕事に携わる者としては、更に小規模の事業者が活用できる簡易で業績向上に直結するような金融支援や、取り組みやすい政策が実施されることを願います。




「本当の支援って何だろね…」

「まあ その字の通り 支えて応援するってことじゃない?」

「応援…だけじゃダメなんだよな
誰かのために尽力して ホントに助けて初めて支援だよ」

「また~ 難しいこと言わないでよ」

「難しくないよ あの大震災から支援支援って簡単に使い過ぎなんだ
そんなに軽く口にできない言葉だよ」

「あら 今回はえらく真面目なのね」

「いつも冗談ばっか言ってられないだろ」

「それだけ熱弁するところが ますます怪しい??」

「おいおい・・・( ̄▽ ̄;)」


2013年8月3日

地元の夏祭り

「今年でもう39回目なんだってね」

「そうか 確かオレらが高一の時からだったもんな」

「昔はよく踊ったもんだわ」

「ああ お前は会社で出てたからな
オレは夜仕事してたから結局踊る機会なかったなぁ」




『ぼんぼん♪ 松本ぼんぼんぼん♪』というオリジナル曲に合わせ、市内の企業やら学校のクラスやら各種サークルの仲間などなど、今や200以上のグループが「連」と呼ばれる単位で参加して市街地を踊りながら練り歩く夏祭り『松本ぼんぼん』。

連の踊り手は総勢2万人、その見物人は松本市の人口24万人に迫る勢いの20万人以上という当地の一大イベントとなっています。

聞くところによると、地元ケーブルテレビ「テレビ松本」では、毎年松本ぼんぼんを最初から最後まで生中継してますが、この番組をちょっとでも見るという人の視聴率は何と80%以上で、私の大好きな夏の甲子園よりも人気があるという話です。

ウチもそうですが、おそらく踊ってる知り合いがテレビに映るかもしれないと期待してついつい観てしまうんでしょうね。


昭和50年「アルプスの里・歴史を偲ぶ城下町に 響かせよう松本ぼんぼんの歌と踊りを!」をテーマに始まったこの夏祭りは、年々盛り上がりを見せ、踊り手となる連の数も増え、練り歩くコースも徐々に広がっているそうです。

そして松本ぼんぼんの踊りは「見せる踊り」として振付けが決まっており、本来は飲酒しながら踊ってはいけないというルールもあり、これに違反すると(見つかると?)イエローカードが出され、サッカー同様2枚でその連は退場になるということです。


そんな由緒正しい?盛大な楽しい夏祭りであるはずの松本ぼんぼんですが、私はかれこれ10年以上出かけることはありません。

最後に松ぼんを見物に行ったのは、先日結婚したウチの長男が小学校低学年の時だったと記憶していますが、そのとき、踊っているのかどうかも分からない、ただダラダラと歩いている連をかなり多く目の当たりにしたのが原因です。

私の眼にはその見るに堪えない光景が殊更虚しく映り、「何だこれ? こんなの祭りじゃないだろ…」と印象付けられてしまったのです。


皆さんもよくご存じだと思いますが、日本には毎年6月に北海道札幌の大通公園で開催される『YOSAKOIソーラン祭り』や、これまた毎年お盆に開催され、海外からも数多くの見物人が訪れるという世界的に有名な徳島の『阿波踊り』があります。

比べるには規模があまりに違うだろと思われるかもしれませんが、YOSAKOIや阿波踊りがどうして毎年百万人以上もの見物客を魅了し続けるのかは、言うまでもなくあの真剣でキレのある踊りにあるわけです。

独自のコンテスト形式で、祭りというより大会といった方がいいかもしれないYOSAKOIソーラン祭りは、ここ数年3万人以上の踊り手がエントリーすると言いますが、その歴史は松ぼんよりも浅く今年で22回目とのことです。

しかし、あの若者達の躍動感と一体感あふれる激しい踊りは、全国ネットのテレビ中継はもちろん、大会後は公式DVDまで販売されるという人気ぶりです。

一方、阿波踊りは400年以上の歴史があり、徳島県内の学校では体育祭や運動会などの演目として採用している学校も多く、地域のほとんどの住民は、学校の授業で阿波踊りを覚えるのだと言います。

最近では本場徳島のみならず、関東、関西に限らず、日本各地で夏の盆踊りとして阿波踊りを採用する地域が増えているとのことです。

松ぼんの本当の振りを習ったことがある人はお分かりだと思いますが、正調松本ぼんぼんは相当きつい踊りです。しかし、それだけにビシッと統率をとって踊れば、相当にカッコいい踊りでもあります。

もちろん毎年しっかりと、正調松本ぼんぼんを踊っている連が相当数あることも知っています。


皆が疲れ果てるまで何度も何度も踊り続けるという運営にも疑問を感じますが、「見せるための踊り」と位置付けて始めた以上、参加した人がただ楽しめばいいというスタンスは容認せず、すべての連が、皆、腰を落として正調松本ぼんぼんをビシッと揃って踊ったら、とてもカッコいい夏祭りになるのにと思っているのは私だけでしょうか…



「あ~あ 踊らないなら出なきゃいいのにね」

「これじゃあ今に見物客もいなくなっちまうな…」

「って言いながらテレビ見てる私たちも何だかなって?」

「だな ごちゃごちゃ言ってねぇでお前が踊れってことだ(笑)」

2013年6月30日

おめでとう!~Congratulations~

「両家を代表いたしまして一言お礼のご挨拶を申し上げます

皆様 本日はご多用中且つご遠路のところを
二人の結婚披露宴にご臨席賜りまして真にありがとうございます

特に 新婦のご関係の皆様におかれましては
九州は鹿児島という 本当に遠いところから
二人のお祝いに駆けつけていただき 心より感謝致します

また先程来より 心温まるご祝辞の数々 
そして過分なるご芳志を頂戴いたしまして重ねて御礼申し上げます…

え~ここまでは台本通りなんですが…

この後も原稿用紙二枚位のカチンコチンに固い挨拶を考えて暗記してきましたが
この場の雰囲気にまったく合わないので…あとはアドリブで行かせてもらいます」

披露宴クライマックスの両家代表の謝辞
新郎の父である私はまったく想定外の心境で会場の皆様に対峙していました…




平成25年6月22日、長男夫婦の結婚披露宴が東京で執り行われました。

3年前の8月のコラム(「反面教師」http://dairicolum.blogspot.jp/2010/08/blog-post.html)でもご紹介しましたが、東京で出逢った九州鹿児島出身の彼女との良好な関係を築きながら、約束通りめでたく添い遂げてくれました。

私は以前ホテルマン時代に、200件近い披露宴のサービスと20件以上の司会を経験してきたので、一通りの段取りは心得ているつもりでしたが、何しろそれは30年も前の、媒酌人やら当地信州ならではの鉄漿親(はねおや)と呼ばれる多くの後見人が新郎新婦と一緒にひな壇に並び、披露式と披露宴がきっちり区分された形式が一般的だった頃の話で、最近の若者の結婚披露宴など出席したこともないので、一体どんなことになるのだろうと期待と不安に胸を躍らせながらその席へと臨みました。

その詳細は文章にしても上手く伝わらないと思うので
以下、画像をご覧になりながら雰囲気を感じて頂ければ幸いです。


先ずはチャペルでの結婚式
親族、友人に囲まれて心地よい緊張感の中で厳かに



新郎新婦の入場と同時に友人たちが皆立ち上がって大きな拍手と祝福の声援
主役の二人は満面の笑みで皆に声をかけ タレントのようにこれに応える



ケーキ入刀  終始 笑顔~笑顔~笑顔  とにかく明るい



その流れからの お約束のファースト・バイトでも会場大爆笑



薩摩おごじょの覚悟のチャレンジ  洒落の分かる嫁さんである



さらに会社の同僚や友人たちの笑いあり涙ありの余興で会場はお祭り騒ぎ



お色直しの再入場はキャンドルサービスではなく
新郎がビアタンクを担いでの生ビールサービス



各テーブルで一気飲みさせられた新郎が汗だくでフラつくので
「お父さんによこしなさい」と代わりに飲んであげたりする(笑)



私は新郎の父親として、ビールやワインを携えて各テーブルを廻り、お酌をしながら「息子夫婦を宜しくお願いします」とご挨拶していたのですが、途中からこの雰囲気の中で何をしてんだろうとそのこと自体に違和感を覚え、これは私ら家族も会場の皆さんと一緒に酒宴を楽しんで、皆さんと一緒に二人を祝福した方がいいなと思うようになっていました。

そして、同じく挨拶回りをしていたカミさんにそのことを伝え、兄貴夫婦を気遣っていた弟と妹にも「お前たちも挨拶回りはもういいから、食事と酒と雰囲気を一緒に楽しみなさい」と促しました。


私ら家族はテーブルに戻り、着席して遅ればせの食事と酒を楽しみながら、息子の友人たちが徹夜で作ってくれたというDVDを見ては感動し、新婦のお友達が用意してくれたというDVDを見ては爆笑し、息子夫婦が作成したという幼い頃からの写真集を見てはウルウルし、その会場の温かい雰囲気に、この幸せな時間がいつまでも続いてくれたらいいのにと思いながら感慨に耽っていました。

すると、この日郷里から20人以上来てくれていた息子の友達が入れ代わり立ち代わり私のもとに「お父さん おめでとうございます!」と酒を抱えてやって来るのです。

幼い頃からよく知る小中時代の友達は
「オレ お父さんに庭で野球教えてもらいましたよね またやりてぇな~」
「サッカーの送迎ではいつもお世話になりました!」
「親父さんに悩み聞いて欲しいんで 今度遊びに行ってもいいっすか?」

面識のなかった高校時代の友達も
「初めまして! あいつとは同じサッカー部で すっごい世話になりました!」
「自分 あいつに何回も助けられました もう今日は最高に嬉しいっす!」

立派になった彼らと何度も握手を交わし
私の感慨はこの時点で完全にピークに達していました。

私は常々子どもたちに、友達は財産だから本気で大事にしなさいと諭してきました。

長男が高校を卒業して東京に出てから8年になりますが、この日息子が親友と判を押す彼らの、こいつのためなら何でもするという若者らしい姿を目の当たりにして、間違いなく親父が伝えたかったことを全うしてくれていると嬉しく思いました。

そして息子が築いてきたその世界は、親の支配を離れ、素敵な伴侶と魅力ある親友らとともに、彼ら自身が自らの力で育んだ素晴らしい世界であると感激しました。

「親は無くとも子は育つ」を、まさか息子の結婚式でこれほど強く感じさせられることになるとは、本当に素晴らしい想定外の贈り物をいただきました。




「あとはアドリブで行かせてもらいます…

人はその友達を見ればその人となりが分かると言われます

私はこれほど多くの…粋で優しいそしてバカな友達を持つ息子を誇りに思います!」


…震える声で言い放ったこの言葉以外
何を話したのかは覚えていません…(^^;)

おめでとう! 私らみたいに幸せで楽しい夫婦になりなさい



2013年6月2日

孫の教育 誰が見る?

「ちょっとちょっと ウチって今貯金いくら位あるの?」

毎度のことだがカミさんから唐突な質問(汗)

「な、、なに 突然?」

「1,500万円くらいないの?」

「せ、、せんごひゃくまん~~? そんな金見たこともないわ!」

「だって今なら孫に1,500万あげても税金かからないんでしょ?」

そう言って情報元のB級週刊誌をワタシの前に差し出した

「あのさぁ その濃い字のとこだけじゃなくて
記事の中味をちゃんと読みなさいね…」

孫というワードにやたら敏感な新米婆ちゃんだけに まあ仕方ないか(笑)



さて、先月平成27年からの相続税改正の話題を書きましたが、その相続税増税の抜け道のように創設された「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という長い名称の制度がこのところ結構話題を呼んでいます。

簡単に言うと、お爺ちゃんやお婆ちゃんが、自分の孫に今後かかるであろう学校などの教育資金を、一度に1,500万円まであげても税金はかからないということです。


この非課税制度をざっくり整理すると

30歳未満の居住者が、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)から自らの教育資金の一括贈与を受ける場合、1,500万円までは贈与税を非課税にするというものです。

父母から子へのお金の一括贈与というのはあまり現実的ではないので、祖父母に目が向けられて、巷では「孫への教育資金の非課税制度」などと紹介されています。

贈与を受ける子、孫、ひ孫の年齢は、上限30歳未満と規定されているだけなので、産まれたばかりの赤ん坊でも対象になります。

教育資金とは、学校教育法上の幼稚園から大学、大学院、専修学校、各種学校の入学金や授業料等の学校教育費が対象になります。また、学習塾やスイミングスクールなど習い事の為に支出する資金も500万円までなら非課税とされます。

お金を贈与する方法は、贈与者が信託銀行に資金の管理を任せる契約を結んで、贈与する資金を一括払い込む方法が主流のようです。今のところ、三井住友信託、三菱UFJ信託、みずほ信託、りそな銀行の4行が「教育資金贈与信託」という専門商品を積極的に売り出しています。

信託銀行のほか、贈与者と被贈与者との間で贈与契約書を作成したうえで、銀行や証券会社に専用口座を開設して教育資金を管理してもらうこともできます。金融機関にしてみれば一時に多額の資金供給を受けることになるので、今後様々な専用新商品が売り出されるのではないかとも言われています。

贈与の手続きとしては、教育資金として支出した領収証などの証明書類を契約した信託銀行等に提示して、それと交換に資金の払い出しを受けることになります。

ということは一旦自分で費用を支払わなければならないので、これは使い勝手の悪いデメリットになると思われます。また、領収証等の発効日から1年以内に手続しなければ非課税措置が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

現在、三菱UFJ信託だけは先行払い出しが可能なようです。但し、こちらの場合は領収証などの証明書類は払い出した翌年3月15日までに提示することと規定されています。

なお、贈与を受けた者は、資金の預入時に「教育資金非課税申告書」を税務署に提出しなければなりませんが、これは契約銀行等経由で届け出されているようです。


また、この制度には注意しなければならない点があります。

贈与を受けた者が30歳になるまでにこの資金を使いきれなかった場合、要するに信託口座等に資金が残っている場合は、その残った額に対して30歳になったその年に贈与税が課せられてしまいます。

例えば、1,500万円まで非課税だからととりあえず1,500万円一括贈与したはいいけれど、贈与を受けたお孫さんがたまたま大学進学せずに、実際に使った教育資金が仮に500万円だけだったとすると、1,000万円は通常の贈与を受けたことになるので、今の税率で約230万円の贈与税を支払わければなりません。

従って、実際どれ位の教育資金が必要かを検討して贈与するのが肝要です。


もともと親や祖父母が子どもや孫の学費を負担しても税金なんか払った人などいないと思いますが、それにもちゃんとした法的根拠があります。

相続税法第21条の3で「扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は非課税とされているのです。この扶養義務者相互間という中に「父母、祖父母から子や孫へ」という関係が含まれています。

今回創設された教育資金の非課税制度の大きな違いは、21条の3の贈与は成長の過程でその都度教育資金を負担(贈与)するのに対して、将来的に生ずるであろう教育資金を現段階で一括して贈与できるところです。

例えば、預貯金を数千万円保有している祖父が、自分の孫5人に対して教育資金として1人1千万円ずつ一括贈与すれば、贈与した時点で合法的に5千万円の相続財産を減額することができるわけです。

今年4月にこの制度が創設された時点では、ある一定の富裕者層のための相続対策で、金融機関に管理を任せるなど手続きも何かと面倒だからあまり需要はないだろうと思っていましたが、前述した信託銀行の積極的な営業姿勢もあり、現在ではその問合せ件数もかなりのペースで増加しているそうです。

それもそのはずで、この新制度は平成27年末までの時限立法となっており、贈与できるのはこの2年間だけなのです。状況によっては延長されるかもしれませんが、基本的には実質あと1年半が期限となります。

いずれにしても前回の相続税同様、すべての人が対象となるわけではありませんが、将来的に相続税の心配がある方で、特に預貯金を多額に保有されている方は、ちょっと頭に入れておいてもいい制度かと思います。




「それじゃ ウチのお爺ちゃんがあたし達の孫に贈与しても大丈夫なの?」

一通り説明したらカミさんが喰いついてきた

「ああ お爺ちゃんも直系尊属だからOKだね」

「それなら 1千万位もらっちゃおう もらっちゃおう!!」

「あかんあかん そんな金ホントにもらったら
オヤジである息子がぶったるんで仕事しなくなるわ」

「あ… それもありかもね…」


そうです 教育資金という大義名分はともかく
なんでもかんでも金出しゃいいってものではありません



2013年4月30日

相続税なんて関係ない?

「ねえねえ ウチは相続税なんて関係ないよね?」

毎度のことだが
テレビを見ながら晩酌していると
風呂から上がったカミさんが唐突に訊いてきた


「ウチ? あははは まるっきり関係ないね」

「でも何だか再来年から税金払う人が増えるんでしょ?」

これも毎度のことだが
情報源は週刊誌か昼の情報番組か(笑)


「ああ 改正があって非課税の枠が縮小されるから
結果的にそういうことになるね」

「へぇ~ それでもウチは関係ないんだ」

「……言いたいのは そこ?」



さてさて、皆さんは相続税というとどんなイメージをお持ちでしょうか?

おそらく財産をたくさん持っているお金持ちの人だけが納める税金というイメージが強いのではないでしょうか。

ご存知の方も多いと思いますが、相続税には基礎控除という非課税限度額が設定されており、現行では【5千万円+1千万円×法定相続人の数】と決められています。

従って、ご夫婦と子供二人の四人家族でご主人が亡くなった場合

5千万円+1千万円×3人(奥様と二人の子ども)=8千万円

これが基礎控除額となり、被相続人(亡くなったご主人)の財産の合計金額がこの8千万円に満たなければ相続税はかからず、税務署への申告も必要ありません。

土地や建物などの不動産は時価ではなく相続税独自の評価額(一般的には時価より低い金額)で計算されるので、土地の値段が高額でない当地長野県のような地方だと、財産が自宅の土地建物と預貯金1千万円程度なら、家族構成にもよりますが、ほとんどの場合基礎控除額の範囲内で相続税がかからないのが現状です。

また、そのマイホームのための住宅ローンがあれば、その借入残高を差し引けますのでさらに財産の価額は少なくなります。


ところが今年平成25年度の税制改正で、この相続税の基礎控除額が4割縮小されることになりました。

実はこの改正は数年前から提起されていたのですが、昨年までは見送られてきた法案でした。それが今年いよいよ国会を通り、平成27年1月1日以降に発生する相続から適用されることになったのです。

基礎控除が4割縮小ということなので、5千万円が3千万円に、1千万円が6百万円にそれぞれ減額されるわけです。ですから先ほどの四人家族の場合だと

3千万円+6百万円×3人=4,800万円が基礎控除額ということになります。

それでも我が家のように、財産が自宅とスズメの涙ほどの貯金しかないのであれば、まだ相続税の心配はしなくても大丈夫なのですが、一つ確認しておいた方がいいのが生命保険です。


被相続人が保険料を負担していた生命保険金も相続財産となります。この生命保険金には先の基礎控除とは別枠で生命保険控除というものがあり、その控除額は法定相続人数×5百万円と規定されています。

先ほどの例で亡くなったご主人名義の生命保険金を仮に6千万円受け取った場合、相続財産となる保険金は、6千万円-5百万円×3人=4,500万円になります。

こうなるとやや高額な保険契約をされている方は少し気になりますね。

ただ、一般的に生命保険金の受取人には配偶者を指定しているケースがほとんどかと思います。相続税にはやはり基礎控除とは別枠で配偶者控除というものがあり、相続税計算の中では最も大きい1億6千万円という控除額が規定されています。

要するに配偶者が相続する財産は1億6千万円まで税金が課されないということです。よって生命保険金も配偶者が受取人に指定されていて、その通りに配偶者が保険金を相続すれば、ほとんどの場合この配偶者控除の枠内で収まるのではないかと思われます。

注意が必要なのは、生命保険金の受取人に配偶者以外の親族を指定している方です。死別や離婚をされて配偶者がおらず、法定相続人がお子さんとか親御さんだけというケースでは、あまり高額な保険金が給付されると、そのために相続税の申告が必要となり、税金を納付しなければならない場合も生じます。

気になる方は一度契約内容を確認しておくことをお勧めします。

今回の基礎控除の4割縮小という改正は、相続税の課税ベースの拡大が目的と言われています。確かに都会に目を向ければ、一般家庭でも持家と多少の預貯金があれば、相続税の対象となる人がかなり増加するものと考えられます。

これまで相続税の申告納付は、亡くなった方全体の4%(約5万人)程度と言われてきましたが、この改正によって6%(約7万人)に増加するだろうという国の試算が報告されています。

平成27年からの適用なのでまだ2年近くあるとは言え、相続税対策というのはそんなに短期間でできるものではありません。

また、ここではざっくりと説明しましたが、詳細に至っては相続税という法律自体非常に難解なので、今回の改正でちょっと気になるなぁという方は、是非一度お近くの税理士さんに…もとい、ウチの事務所までお気軽にご相談下さい。




「なら ウチだって保険金で相続税出るんじゃない?」

「オレの保険? あれもう払い済みで
 死んでも5百万しか下りないよ」

「エエ~~!! 5、5、5百万~~?!」

カミさんの顔色が例えようのない色に変わった

「ちょっと~ それどういうことよ?!」

「どういうことって
 ウチは子供もみんな社会人になったし
 オレが死んでも金なんか要らんでしょ」

「金なんか要らんって…
 あたしはどうなるのよ…」

「お前は年金出るし
 子どもたちが面倒見てくれるだろ」

「そんな… 無責任な…(泣)」

「無駄なお金は持たない方が身のためだって」


ホントは1年更新の掛捨保険があるので全部で3千万円ですが
安心するといけないのでカミさんには内緒です(笑)



2013年3月31日

保険は身の丈

「おまえも子どもできたから 保険に入っとかないといかんな」

週末久しぶりに赤ん坊の顔を見せに来た息子夫婦との夕食後
軽く一杯飲りながらそれとなく促した

「ああ 保険ね… やっぱそういうもん?」

その必要性をまだ実感できない息子はトボケタ感じで訊き返す

「そういうもんって もしお前が明日死んだらどうすんだ
残された嫁と子どものことは知りませんって言うつもりか?」

「そりゃ 有りえないね」

ここはさすがに息子も即答する

「だろ? だから最低限必要な保険には入らなきゃまずいだろ?」

「うん そうだね… 分かった!」

横で私らのやりとりを聴いていた嫁さんも大きく頷いた



生命保険というと、自分に万が一のことがあったときの保障として絶対に必要だと考える人と、人の命と引き換えに金銭を手に入れるとか、人間の死を前提とした胡散臭い制度と捉えて毛嫌いする人に分かれる特徴があります。

以前このコラムでも触れたことがありますが、ウチの事務所が所属するTKC全国会には「企業防衛制度」という本来業務があります。これは関与先企業の経営者に万が一不測の事態が起こっても、その後、会社や遺族が路頭に迷うことがないように、必要十分な資金確保を生命保険によって填補するという業務です。

これを迅速、確実に関与先企業に提供できるようTKCが大同生命保険㈱と提携し、同社が設計した企業向けの保険商品を私たち会員事務所がその代理店となって関与先に推進しています。

私たちはこの業務を会計事務所の立場として関与先企業を守るための義務と位置付けていますので、保険が好きとか嫌いとか、保険料が高いとか勿体ないとかそんな時限で単純に保険を売っている訳ではありません。

関与先企業が抱えている借金や経営者が亡くなった場合の死亡退職金、さらに残された遺族のための生活保障などを基準とした「標準保障額」を算出し、それがその経営者にとっての絶対要件であれば、半ば強制的にでも加入することを勧めます。

この「企業防衛制度」は基本的に法人を対象として行っていますが、私らはこの業務をプロとして遂行するために、これまで生命保険等に関する専門的なスキルを身に付けてきましたから、一般家庭が安心して暮らせる環境を確保するための一個人への「生活防衛」としてのアドバイスも当然に行えます。


「1億円くらい入っときゃいいかな」

「1億~? お前の給料で月々3万円も保険料払えるの?」

「ゲッ! そんな高いの?」


何の考えもなく息子が言うので、私は二人を前にそもそもの生命保険の仕組みや種類を説明してから、現在の息子の家族構成、収入、年齢などからどんな種類の保険でどの程度の保障を付保するのが適切かをアドバイスしました。

先月23歳になったばかりの若い息子に私が薦めた条件は、最も負担の軽い保険料で最大の死亡保障が確保できること、短い更新期間で保障額や契約内容が見直しやすいことという二点でした。

そして息子夫婦と話し合い、最終的に5年更新の無配当定期(掛捨)保険を主契約として、不慮の事故など病気以外の原因で死亡した場合の災害割増特約を主契約と同額付保し、身体障害状態となった場合などに保障する傷害特約、それに三大疾病と呼ばれるガン、心筋梗塞、脳卒中の場合に保障を厚くする最大90日の医療保障特約をセットした保険に入ることに決めました。

この保険の月々の支払保険料は7,500円弱ですが、どちらかと言うと彼らが現在負担できる保険料ベースで設計した保障内容です。特に若いうちは多少保障が不足しても、保険料の負担が生活に支障をきたさないようにすることも考慮すべき要件です。


生命保険というのは、何でもかんでも保障さえ厚く大きくすればいいというものではなく、自身の現状と将来のライフプランからその内容を吟味して、あくまで身の丈に合ったものに入ることが肝要です。

現在加入している生命保険の保障内容が実はよく分からないという方もよくお見受けします。ご自分が適切な保険に入っているのか不安のある方や自信がない方は、早いうちに契約内容を見直すことをお勧めします。

当方でもお手伝いできますのでお気軽にお声かけ下さい。



「お前のように結婚して子どもが産まれて家庭を持ったら
自分の家族を一生守り抜く責任としてこの位の保障は必要だな」

「うん…でも金ないからこれでも結構きついけどね」

「金がないから保険に入るんだよ
金が十分ありゃ保険なんて必要ないだろ」

「あ そうか! 父さん上手いこと言うね~」

「バカやろ 口八丁で保険売ってるみたいに言うな(笑)
すべてはお前の可愛い娘のためだ 死んだ気になって働け!」

「ラジャー!!」



2013年2月28日

高齢化時代

「今回のショートステイは何日まで?」

「3月の7日まで 帰ったらすぐ信大で認知症のモニター検査です」

「そうか ご苦労さん いつもありがとよ」 

「どういたしまして 大事なお母様ですから(笑)」

「イヤミなやっちゃなぁ~ まあヨロシク頼むわ!」

「かしこまりました~(笑)」



現在我が家には、同居している私の母親と、隣に建つ実家にカミさんの両親がおり、カミさんが一人でこの三人の世話をしています。

言うに及ばず皆八十代半ばの後期高齢者で、二人の母親は要介護認定を受けており、父親は要支援認定を受けています。

私の母親は認知症による要介護1で、幸い身体的にはまだ元気なので、好天の日は散歩に行ったり、風呂やトイレも一人でできる状態なのである程度放っておいても大丈夫です。また、ショートステイなどに行くのも平気な人で、一ヶ月のうち半分は出かけてくれるので助かっています。

実家の父親もすっかり腰は曲がって杖を突いて歩く状態ですが、頭はまだまだしっかりしており、健康のためにと自ら一日一度は外に出て、スーパーのワゴンにつかまって店内を歩き回ったりしています。

三人の中では実家の母親が一番症状が重く、身体的障害により要介護3を受けており、寝たきりというわけではありませんが、家にいるときはほとんどの時間を床で過ごし、カミさんが介抱しなければ入浴も外出もできない状態です。

幸いウチのカミさんは2級ヘルパーの資格を持っており、以前は民間の介護施設で訪問ヘルパーの仕事を3年ほどしていて、もっと重症の高齢者の下の世話やら身体介護などの経験があるので、年寄りの身の回りの世話自体は何の苦もなくこなしてくれます。

とは言え、その三人の世話に加え、ウチと実家二世帯分の炊事、洗濯、掃除に買い物、そしてほとんど毎日代わる代わる連れ立っていかなければならない病院回りが、時間的にも体力的にも相当な負担となっています。

要介護認定を受けていることで利用できるショートステイやデイサービスに、私の母親を可能な限り行かせているのも、私が夕飯後の皿洗いから、洗濯、掃除なんかをかいがいしく手伝っているのにもこういった内情があるからなんです。

少子高齢化問題が叫ばれ出してからもう何年も経ちます。その細かい課題を語ることは本題ではないので触れませんが、間違いなく高齢化は今後さらに深刻さを増し、ほとんどの家庭が夫婦双方の親の介護問題を抱えることになるでしょう。

私と同じ立場の世の旦那様方は、多少仕事で疲れていても、介護の中心となる奥方の負担が少しでも軽くなるように、家の中で手伝えることはできるだけしてあげて、面倒くさがらずに奥方の話を聴いてストレスを緩和するように協力してあげましょうね。



そんな要介護認定を受けているお年寄りがご家族の中にいらっしゃるという方に一つ情報です。

ちょうど今、ウチの事務所も確定申告真っ只中の繁忙期ですが、要介護認定を受けている方が市町村長の障害者認定をもらえれば、所得税法上の障害者控除を適用することができます。

各市町村によって多少基準は違うようですが、当地松本市の場合、要介護認定1か2であれば普通障害者、3は状態に応じて普通か特別のいずれか、4か5なら特別障害者の認定となるようです。

例えば私は要介護認定1を受けている同居の母親を所得税法上の扶養家族としていますが、障害者認定を受けずに同居老親の老人扶養控除だけを適用すると58万円の所得控除ですが、先の市町村認定を受ければ、普通障害者控除27万円も適用されるので合計85万円の所得控除額になります。

また特別障害者の認定を受ければ、まず特別障害者控除40万円が適用となり、さらにその親御さんが同居老親に該当すれば、老人扶養58万円+同居特別障害者加算35万円=93万円の扶養控除となり、合計133万円の所得控除が受けられるのです。

老人ホームなどに入所していて別居の場合であっても、特別障害者控除40万円と別居老人扶養控除48万円の合計88万円の所得控除額となります。

年収500万円のサラリーマンの場合で普通障害者控除が適用になれば、所得税、住民税合わせて約5.5万円、同居特別障害者なら同じく約15万円、別居特別障害者でも約8万円の税負担が軽減されます。

会社の年末調整で既に扶養する親御さんを老人扶養控除だけで計算した方でも、障害者認定を受けられれば確定申告をして税金を取り戻すことができます。

仮に要介護認定を受けているご本人に、不動産収入や年金収入による一定の所得があって確定申告している場合でも、もちろんご自身が障害者控除を適用できるので、その分税負担が軽減されます。

以上のように障害者控除はその背景から控除額も多く、扶養する方々の税負担を大きく軽減してくれるので、該当する方は控除もれのないようにしましょう。


なお、市町村長の障害者認定は、ご家族の方いずれかがお住まいの市町村役場の高齢福祉課の窓口に行って、口頭で対象者の住所、氏名、生年月日などを申請すれば、何の手間もなくその場で無償で発行してくれます。

要介護認定を受けている親御さんがいらっしゃる方は、これからでも市町村長の認定を受けて、障害者控除を適用して還付申告されることをお勧めします。

ご不明な点やご相談があれば、当方までお気軽にご連絡下さい。




「おふくろの障害者認定すぐ下りたよ」

「へ~ホント~… で? どうなるの?」

「おふくろの場合普通障害者だから27万円の控除だな」

「すごいじゃん! 27万円も税金戻ってくるんだ~」

「・・・・・・」


色んな意味で頭の下がるカミさんに いつも感謝です(笑)


2013年1月31日

レポート

「ふぁ~~~ まだ書いてるの?」

ソファでうたた寝していたカミさんが
でかい欠伸をしながら問いかける

「なかなか まとまらないんだよ…」

時計は日曜の午前零時を回って月曜になっていた
今日が提出期限だから仕上げないといけない

「じゃ先に寝るね ふぁ~~~ オヤスミ~」

「毎日先に寝てんじゃん…」

「ん? なんか言った?」

「いや 別に… オヤスミ~」

こんな会話を経由しながら
二ヶ月に一度の真夜中のレポート作りは
ワタシの恒例行事となっている



ウチの事務所では、以前このコラムでもご紹介した千葉県は香取市にある、臨済宗妙心寺派妙性寺のご住職でTKC全国会中央研修所の顧問でもある高橋宗寛和尚の心の勉強会「原点の会」を受講しています。
(詳しくは2011年1月のコラム「10年越しの箸袋」コピペでどうぞ)
 http://dairicolum.blogspot.jp/2011/01/10.html


高橋和尚の勉強会は隔月年6回行われますが、初回が平成2年12月でしたから、私らはもう20年以上受講していることになります。

そして、ウチの事務所では勉強会終了後必ずレポートを提出することになっており、そのレポートは事務所全員が輪読するだけでなく、講師の高橋和尚にも毎回郵送されています。

従って、これまで皆120件以上のレポートを提出してきたわけですが、実はこのレポート作りが私らにとって最大の勉強、いや試練と言ってもいい位置付けとなっています。



とにかく読書感想文みたいな第三者的な書き方や、できもしない決意表明のような内容は書いてはいけないことになっており、しかもテーマが 「一回しかないこの人生をいかに生きるか」「本当の自分とは何者か」といった心の問題なので、我々凡人は毎回四苦八苦しながら書き上げているのです。

と、ここでああだこうだ説明しても実感がないので、ちょっとお恥ずかしいですが、今回はこの1月24日に今年初めて行われた勉強会で私が書いたレポートを掲載させていただきます。これだけ読んでもどんな研修内容だったか分からないでしょうが、こんなことを考えさせられる内容だったと理解して下さい。窮々ですがお付き合いいただければ幸いです。



                 原点の会レポート 
                                   平成25年 1月24日
                                      吉田 一樹
 子どもの頃は「どうして俺がやらなきゃいけないんだ」と先ず考えていたような気がする。班長、学級長、生徒会長などなど、特に長と名のつく役目をやらなければならないといった状況では、間違いなく百パーセントそうなる前から「できない」と自己限定して、できない言い訳を探して何とか断ろうとしていた。もっとも当時はただ面倒くさいからやりたくないと思っていたこともあったが、自分にはそんな能力はないから無理だと思っていたのも事実である。しかし渋々その役につき、実際にその役目を終わってみれば、どれも特に大きな問題もなく必要な任務は遂行され、逆に周囲に労われてりしてとりあえず使命は果たされてきた。何のことはない、自らの力など鼻クソみたいなものだが、労ってくれた周囲の人々の協力と尽力のおかげで一応の形になるのだ。そんな経験を何回もしているのに、また新たな役目を与えられそうになる度に、大人になってからも相変わらず「できない」の自己限定を持ってそれに向き合っていた気がする。それが何年か前の勉強会で「一般的に人があなたにものを頼むときは、誰もあなたの力量以上のことを頼むことはない、あなたならできると思うから頼むのだ。こんな言葉がある『いただかなければいけないものはいただかなければいけないものだ』」という和尚のお話をしっかりと受け入れられるようになってからは、本当に自分で大丈夫なんだろうかと不安になることはあっても、とりあえずそれを頭から断らないことを自身の決めとして実践してきたつもりである。自分の中でそれを最も強く実感したのは、娘の高校で私の母校のPTA会長を打診された時だった。四年前、娘が二年生の時に、私は事情があって退会した役員の人員補充のために急遽名前だけだからなんて調子のいいことを言われ、まったく縁のなかったPTA本会に入ることになった。高校のPTA本会の役員というのは、一旦なると子どもが卒業するまで続けるのが慣習になっている。そして子どもが三年生に上がるときに、その代の役員の中から会長を選出するわけだが、当然私らの代の役員の中には既に次期会長候補の人物がいて、その段階ではつい半年前に役員になった私がPTA会長になるはずはなかった。しかし、役員決めの最終会議の数日前、一代上の現会長さんから次期会長を私にと連絡が入った。件の次期会長候補さんが「自分にはできない」と現会長さんに相談してきたのだという。その方は確かに遠方にお住まいだったので、場所的な条件が悪く大変であることは事実だった。あのとき一瞬キツネにつままれたような感情を持ったが、会長さんの話を聞きながら、私の脳裏には『いただかなければいけないものはいただかなければいけないものだ』の言葉が本当に浮かんでいた。そして申し訳なさそうに私を説得する会長さんの言葉を遮って「分かりました、いいですよ、私でよければ務めさせていただきます」と応えていた。女性まで含めれば同学年に五名の役員がいるので、私が駄々をこねればその要請を回避することは不可能ではなかったが、そのとき私は意識して「とりあえず断らない」を実行したのである。そして結果的にそれは私にとって非常に貴重な経験となり、それまで知りえなかった素晴らしい仲間たちとの出逢いをももたらしてくれる大きな出来事となっていた。
「龍と成って天に昇り 蛇と作(な)って草に入る」今日一番心に残った言葉である。
たまたま縁あって龍となったならば、天空に飛翔して風雲を巻き起こす龍の如くに臆することなく立居振舞い、たまたま縁あって蛇となったならば、草むらの中を人に知られずに進む蛇の如くに潜行して陰徳に励む。自分に限定や前提を持たず、置かれた立場で自由自在に生きることを端的に示した言葉だと思う。どんな立場に置かれようとも、それらはすべて自己を因とする縁のなすものであることを認識して、そこに余計な言い訳を入れずに、これからも「とりあえず断らない」が自分の標準になるよう実践していきたい。


こんな感じですが…改めて読み返すとやっぱり決意表明になってますね
ふぅ~~大変だ(笑)