2007年4月30日

担雪埋井

「この人は相手の話を聞く耳がないから駄目
鑑定しても無駄! はい以上終わります!」

六星占術の細木数子大先生が幸せって何だっけと
ズバリ言ってる姿を最近よくTVで目にする

うちのかみさんも例外にもれず、印税10億とも囁かれる
女史の単行本に数年前からハマっていてやたら詳しい

ここから得た情報を基に、頼みもしないのに毎年私に
素晴らしい?受け売りのアドバイスを投げかけてくれる

「あんたは金星のマイナスだから去年まで大殺界だったの
でも今年から3年間はすごくいい運気なんだって
のびるわよ・・・ウン、絶対のびる!」

「・・・何が? 髪の毛?」

「もうあんたには聞く頭がないから駄目!言っても無駄!」

「いやいや頭はあるけど・・・毛根が・・・」

「バカッ! もういい!」


大宇宙の原理原則とか統計学上の根拠とか、六星占術も色々言われていますが
世の中には理屈では解決できない不思議がまだまだあふれているのは確かです。
だからその分野においては誰が何を言ってもその是非は分からないし、
極端に依存したり否定することも意味のないことだと思います。

まあ細木数子さんの場合、番組の中では総じて家系を知り、祖先を供養して、
人の道に違わずに生きることが大事と結ばれるので、とりあえずごもっともと
いう感じで一件落着といったところでしょうか。

それはともかく、私は彼女とゲストのやりとりを見ていて、自分の言いたいことを
相手に聞き入れてもらうのは難しいなという方向にどうしても目がいきます。

皆さんも家庭や社会の人間関係の中で『この人は本当に相手の話を聞かないなぁ』
という思いを抱くことが結構ありませんか?

私たちも税務会計指導、経営支援という仕事上の立場から、
経営者の方々に色々と助言させていただくことが多いのですが、
中にはどう話しても聞き入れてもらえない方がいらっしゃるのは事実です。

細木数子さんのように、「聞く耳を持たない人には話しても無駄!」と
突き放してしまえば楽なのでしょうが、私たちはそうも言ってられません。


そんなときうちの事務所では飯塚毅名誉会長の言葉を拠り所としてきました。

担雪埋井(たんせつまいせい)」  “雪を担いで井戸を埋める”

何度やってもすぐに溶けてしまう雪で深い井戸を埋め尽くすことはできません。
しかしこの言葉の意味するところは、井戸を埋めるという結果を求めているのではなく
たとえ無理だと分かっていても、それを無心でやり続ける行為こそが尊いということで
特に我々職業会計人にはその精神が必要なんだという教えなのです。


人にはそれぞれ物事に対する主義主張や信念があります。
そのほとんどはその人の生活環境や人間関係によって確立されると言われています。

ただ、無意識のうちにそれは自分の好き嫌いを基準に決められた固定観念となって
強固に自身の心を縛り付けてしまうという恐い傾向もあるようです。
ここに人の話を受け入れにくい心の状態ができてしまうのかもしれません。

私たちはまずはそういった経営者の方の信念とか考え方を理解するために
真正面から向き合ってじっくりと何度でも話を聴くところから始め、
その上で関与先企業にとって少しでも有意義な助言を、また時には多少言い辛いことも
「担雪埋井」の精神で何度でも言い続けていきたいと思っています。

皆さんに「しつこいなぁ」と思われることが、実は私たちの目標なんです。