「今年でもう39回目なんだってね」
「そうか 確かオレらが高一の時からだったもんな」
「昔はよく踊ったもんだわ」
「ああ お前は会社で出てたからな
オレは夜仕事してたから結局踊る機会なかったなぁ」
『ぼんぼん♪ 松本ぼんぼんぼん♪』というオリジナル曲に合わせ、市内の企業やら学校のクラスやら各種サークルの仲間などなど、今や200以上のグループが「連」と呼ばれる単位で参加して市街地を踊りながら練り歩く夏祭り『松本ぼんぼん』。
連の踊り手は総勢2万人、その見物人は松本市の人口24万人に迫る勢いの20万人以上という当地の一大イベントとなっています。
聞くところによると、地元ケーブルテレビ「テレビ松本」では、毎年松本ぼんぼんを最初から最後まで生中継してますが、この番組をちょっとでも見るという人の視聴率は何と80%以上で、私の大好きな夏の甲子園よりも人気があるという話です。
ウチもそうですが、おそらく踊ってる知り合いがテレビに映るかもしれないと期待してついつい観てしまうんでしょうね。
昭和50年「アルプスの里・歴史を偲ぶ城下町に 響かせよう松本ぼんぼんの歌と踊りを!」をテーマに始まったこの夏祭りは、年々盛り上がりを見せ、踊り手となる連の数も増え、練り歩くコースも徐々に広がっているそうです。
そして松本ぼんぼんの踊りは「見せる踊り」として振付けが決まっており、本来は飲酒しながら踊ってはいけないというルールもあり、これに違反すると(見つかると?)イエローカードが出され、サッカー同様2枚でその連は退場になるということです。
そんな由緒正しい?盛大な楽しい夏祭りであるはずの松本ぼんぼんですが、私はかれこれ10年以上出かけることはありません。
最後に松ぼんを見物に行ったのは、先日結婚したウチの長男が小学校低学年の時だったと記憶していますが、そのとき、踊っているのかどうかも分からない、ただダラダラと歩いている連をかなり多く目の当たりにしたのが原因です。
私の眼にはその見るに堪えない光景が殊更虚しく映り、「何だこれ? こんなの祭りじゃないだろ…」と印象付けられてしまったのです。
皆さんもよくご存じだと思いますが、日本には毎年6月に北海道札幌の大通公園で開催される『YOSAKOIソーラン祭り』や、これまた毎年お盆に開催され、海外からも数多くの見物人が訪れるという世界的に有名な徳島の『阿波踊り』があります。
比べるには規模があまりに違うだろと思われるかもしれませんが、YOSAKOIや阿波踊りがどうして毎年百万人以上もの見物客を魅了し続けるのかは、言うまでもなくあの真剣でキレのある踊りにあるわけです。
独自のコンテスト形式で、祭りというより大会といった方がいいかもしれないYOSAKOIソーラン祭りは、ここ数年3万人以上の踊り手がエントリーすると言いますが、その歴史は松ぼんよりも浅く今年で22回目とのことです。
しかし、あの若者達の躍動感と一体感あふれる激しい踊りは、全国ネットのテレビ中継はもちろん、大会後は公式DVDまで販売されるという人気ぶりです。
一方、阿波踊りは400年以上の歴史があり、徳島県内の学校では体育祭や運動会などの演目として採用している学校も多く、地域のほとんどの住民は、学校の授業で阿波踊りを覚えるのだと言います。
最近では本場徳島のみならず、関東、関西に限らず、日本各地で夏の盆踊りとして阿波踊りを採用する地域が増えているとのことです。
松ぼんの本当の振りを習ったことがある人はお分かりだと思いますが、正調松本ぼんぼんは相当きつい踊りです。しかし、それだけにビシッと統率をとって踊れば、相当にカッコいい踊りでもあります。
もちろん毎年しっかりと、正調松本ぼんぼんを踊っている連が相当数あることも知っています。
皆が疲れ果てるまで何度も何度も踊り続けるという運営にも疑問を感じますが、「見せるための踊り」と位置付けて始めた以上、参加した人がただ楽しめばいいというスタンスは容認せず、すべての連が、皆、腰を落として正調松本ぼんぼんをビシッと揃って踊ったら、とてもカッコいい夏祭りになるのにと思っているのは私だけでしょうか…
「あ~あ 踊らないなら出なきゃいいのにね」
「これじゃあ今に見物客もいなくなっちまうな…」
「って言いながらテレビ見てる私たちも何だかなって?」
「だな ごちゃごちゃ言ってねぇでお前が踊れってことだ(笑)」
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