2013年6月2日

孫の教育 誰が見る?

「ちょっとちょっと ウチって今貯金いくら位あるの?」

毎度のことだがカミさんから唐突な質問(汗)

「な、、なに 突然?」

「1,500万円くらいないの?」

「せ、、せんごひゃくまん~~? そんな金見たこともないわ!」

「だって今なら孫に1,500万あげても税金かからないんでしょ?」

そう言って情報元のB級週刊誌をワタシの前に差し出した

「あのさぁ その濃い字のとこだけじゃなくて
記事の中味をちゃんと読みなさいね…」

孫というワードにやたら敏感な新米婆ちゃんだけに まあ仕方ないか(笑)



さて、先月平成27年からの相続税改正の話題を書きましたが、その相続税増税の抜け道のように創設された「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という長い名称の制度がこのところ結構話題を呼んでいます。

簡単に言うと、お爺ちゃんやお婆ちゃんが、自分の孫に今後かかるであろう学校などの教育資金を、一度に1,500万円まであげても税金はかからないということです。


この非課税制度をざっくり整理すると

30歳未満の居住者が、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)から自らの教育資金の一括贈与を受ける場合、1,500万円までは贈与税を非課税にするというものです。

父母から子へのお金の一括贈与というのはあまり現実的ではないので、祖父母に目が向けられて、巷では「孫への教育資金の非課税制度」などと紹介されています。

贈与を受ける子、孫、ひ孫の年齢は、上限30歳未満と規定されているだけなので、産まれたばかりの赤ん坊でも対象になります。

教育資金とは、学校教育法上の幼稚園から大学、大学院、専修学校、各種学校の入学金や授業料等の学校教育費が対象になります。また、学習塾やスイミングスクールなど習い事の為に支出する資金も500万円までなら非課税とされます。

お金を贈与する方法は、贈与者が信託銀行に資金の管理を任せる契約を結んで、贈与する資金を一括払い込む方法が主流のようです。今のところ、三井住友信託、三菱UFJ信託、みずほ信託、りそな銀行の4行が「教育資金贈与信託」という専門商品を積極的に売り出しています。

信託銀行のほか、贈与者と被贈与者との間で贈与契約書を作成したうえで、銀行や証券会社に専用口座を開設して教育資金を管理してもらうこともできます。金融機関にしてみれば一時に多額の資金供給を受けることになるので、今後様々な専用新商品が売り出されるのではないかとも言われています。

贈与の手続きとしては、教育資金として支出した領収証などの証明書類を契約した信託銀行等に提示して、それと交換に資金の払い出しを受けることになります。

ということは一旦自分で費用を支払わなければならないので、これは使い勝手の悪いデメリットになると思われます。また、領収証等の発効日から1年以内に手続しなければ非課税措置が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

現在、三菱UFJ信託だけは先行払い出しが可能なようです。但し、こちらの場合は領収証などの証明書類は払い出した翌年3月15日までに提示することと規定されています。

なお、贈与を受けた者は、資金の預入時に「教育資金非課税申告書」を税務署に提出しなければなりませんが、これは契約銀行等経由で届け出されているようです。


また、この制度には注意しなければならない点があります。

贈与を受けた者が30歳になるまでにこの資金を使いきれなかった場合、要するに信託口座等に資金が残っている場合は、その残った額に対して30歳になったその年に贈与税が課せられてしまいます。

例えば、1,500万円まで非課税だからととりあえず1,500万円一括贈与したはいいけれど、贈与を受けたお孫さんがたまたま大学進学せずに、実際に使った教育資金が仮に500万円だけだったとすると、1,000万円は通常の贈与を受けたことになるので、今の税率で約230万円の贈与税を支払わければなりません。

従って、実際どれ位の教育資金が必要かを検討して贈与するのが肝要です。


もともと親や祖父母が子どもや孫の学費を負担しても税金なんか払った人などいないと思いますが、それにもちゃんとした法的根拠があります。

相続税法第21条の3で「扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は非課税とされているのです。この扶養義務者相互間という中に「父母、祖父母から子や孫へ」という関係が含まれています。

今回創設された教育資金の非課税制度の大きな違いは、21条の3の贈与は成長の過程でその都度教育資金を負担(贈与)するのに対して、将来的に生ずるであろう教育資金を現段階で一括して贈与できるところです。

例えば、預貯金を数千万円保有している祖父が、自分の孫5人に対して教育資金として1人1千万円ずつ一括贈与すれば、贈与した時点で合法的に5千万円の相続財産を減額することができるわけです。

今年4月にこの制度が創設された時点では、ある一定の富裕者層のための相続対策で、金融機関に管理を任せるなど手続きも何かと面倒だからあまり需要はないだろうと思っていましたが、前述した信託銀行の積極的な営業姿勢もあり、現在ではその問合せ件数もかなりのペースで増加しているそうです。

それもそのはずで、この新制度は平成27年末までの時限立法となっており、贈与できるのはこの2年間だけなのです。状況によっては延長されるかもしれませんが、基本的には実質あと1年半が期限となります。

いずれにしても前回の相続税同様、すべての人が対象となるわけではありませんが、将来的に相続税の心配がある方で、特に預貯金を多額に保有されている方は、ちょっと頭に入れておいてもいい制度かと思います。




「それじゃ ウチのお爺ちゃんがあたし達の孫に贈与しても大丈夫なの?」

一通り説明したらカミさんが喰いついてきた

「ああ お爺ちゃんも直系尊属だからOKだね」

「それなら 1千万位もらっちゃおう もらっちゃおう!!」

「あかんあかん そんな金ホントにもらったら
オヤジである息子がぶったるんで仕事しなくなるわ」

「あ… それもありかもね…」


そうです 教育資金という大義名分はともかく
なんでもかんでも金出しゃいいってものではありません



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