2006年8月18日

「改革」と「改善」 Vol.3

昨今、街角からは珈琲のおいしい喫茶店が次々と姿を消し
気がつけばファミレスやファーストフードのチェーン店が
あちこちで「いらっしゃいませ!○○へようこそ!」
引きそうな明るさと気軽さを武器に年中無休で営業しています

私等の学生の頃には、それこそあちこちに個性的で
こだわりのある通称「サ店」がたくさん存在していました

仲間とたむろするときも、彼女とデートするときも
まずはいつものサ店で待ち合わせ・・・
インベーダーにブロック崩し、はたまたポーカーゲームで
生活指導の先生にお縄・・・(って私のことではありませんよ)
なんてのがよくあるパターンでしたよね?

それにちょっと郊外には隠れ家的なサ店も結構ありました
裏に駐車場、停まってる車を隠すほどの大きな木
山と積まれたマンガ本、そして可愛いバイトの女の子・・・
(だから私のことではありませんって!)
ブランチタイムの営業マンの憩いの場でしたよね??

そんな洒落たお店が姿を消してしまうのは
なじみが何軒もあった私(結局俺かい!)としては実に寂しい限りです・・・


さて、前回で完結するつもりだったテーマなのですが、「改革」も重要だろう!というご指摘を頂戴したこともあり、やはり「改革」と「改善」と謳った以上、今回はその「改革」についても私なりに考えてみようと思います。

「改善」も「改革」も勿論どちらも重要で、どっちが上位とか本来比較できるものではありません。ただ前回も述べたとおり「改善」の本質は内部の人々の心の問題で、どちらかと言えばソフトの部分の見直しが主体であると思いますが、「改革」はその組織自体や経営資源(ひと・もの・カネ・情報など)といったハード部分の再構築が主体になるものなので、目的から捉えるとかなり明確に区分されると思います。

日本経団連の奥田碩会長は「経営改革とは一言でいうと競争力の強化である」と表現されています。さらに経営改革を実現するためには「組織を再編し、経営資源を高収益部門に効率的且つ重点的に投入することが重要」と説かれています。
また「改革」というと最近すぐ頭に浮かぶのが日産自動車のカルロス・ゴーン氏ですが、氏のように企業再建をかけて、いたみを伴う大改革を実行しなければならない場合も企業経営にはあります。

いずれにしても事業の根幹部分を再構築するという面で、「改革」は事業の永続的な発展をかけて臨む非常に重要な手段であることは間違いありません。


喫茶店が商売を続けられなくなった本当の原因は何でしょう?

それはファミレスやファーストフードといった同業種競合店の出現ではないと思います。時代とともに劇的に変化してきた一般消費者の生活環境が、喫茶店という業態の存在価値を必要としなくなったからではないでしょうか。

世に言う「消費者ニーズの変化」ということです。

おいしい珈琲は家庭でも手軽に味わうことができるようになりました。
モーニングやランチもコンビニやほか弁で十分という時代です。
喫茶店のみならず飲食業全般に言えることですが、以前は飲食専門店でしか得ることができなかった商品やサービスが、違う業種のお店から気軽にリーズナブルにいくらでも手に入る時代になってしまったのです。

私が飲食に携わっていた頃は、従業員にしっかりとした接遇マナーを教育し、掃除の行き届いた清潔で明るい雰囲気を維持して、常連さんを飽きさせないようにメニュー構成(勿論提供するメニューはそこそこいけてるのは当然です)を適宜変更してイメージアップを図る。そんな顧客の立場で常に内部の「改善」に努めていれば競合店に負けることなくある程度は繁盛したものです。

しかし飲食業界ではもう何年も前から「改善」だけでは対応しきれない消費者ニーズの変化が生じていたのです。
そう、その時必要だったのは「改善」ではなく「改革」であり、ある意味いち早くその「改革」に着手してできあがった業態がコーヒー、ライスお代わり自由のファミレスや、24時間年中無休のファーストフード店なのです。

明らかに言えることは、事業経営にとって「改善」は日常的に行うべきものですが、「改革」は機を逃してはならないということです。さらに言えば、日常継続的に「改善」に対する問題意識を持っていなければ、本当に「改革」をしなければならない機を捉える先見力や洞察力といった能力は育まれないのではないかと思うのです。


「改革」には新たな資金やいたみを伴う場合もあります。誰でもどんなことでもできるというわけではありません。従って厳しいですが撤退という「改革」があるのも事実です。いずれにしても機を逃さず、ニーズの変化に対応すべく保有する経営資源を分析して、今できることは何かを綿密に計画し、決定すれば大胆に実行すること、それが「改革」のキーワードではないでしょうか。


「改革」が必要なときにメニューのみを「改善」して業績回復を図ろうとする経営者の方が、実は結構多いことを現場の第一線で業務に当たる会計事務所職員はよく知っているはずです。
そんなとき私たちは経営を支援する立場として、それだけでは何ら状況は変わらないことを明確に進言できる力を身に付けておきたいものです。

2006年8月1日

「改革」と「改善」 Vol.2

「おはようございます!!!」
朝礼時、一人ずつ順番で近所に響き渡る?
くらいの声を張り上げて挨拶しよう

「はい!川崎会計事務所の○○です!」
電話を受けるときは自分の名前を名乗り
責任の所在を明らかにしよう

「わー どうして机の上に何もないんですか?」
(以前事務所見学にいらっしゃった同じTKC会員事務所の方々が
ウチの事務室を見て漏らした言葉です)
帰所時、外出時は机上に何も置かないようにしよう


<週2点改善提案>
これはこのコラムでも熱くご紹介申し上げた、映画『不撓不屈』の主人公
我らが飯塚毅先生が提唱された改善活動のための制度です。

「1年は50週、1週間に2点ずつの改善事項に真剣に取り組めば
1年で100項目の改善が図られることになる。 然らば
あなたの事務所は1年前とは見違えるほどの業務品質の向上を
実現することができますぞ!」

という理路整然としたコンセプトに基づいた、TKC会員事務所の人なら誰もが知っている(はずの)ノウハウです。

飯塚先生を師と仰ぐ我が川崎浩所長は、当然開業当初からこの「週2点改善事項」を導入し、事務所の改善活動として取組んできました。

私が入った頃は当番制で提案していましたが、当時所長を含めて4人しかいなかったので、毎月最低1回は2点ずつの改善提案をしなければならなかったわけで、これがなかなか・・・ネタを探すのが正直プレッシャーに感じる時期もありました。そして・・・

「姿勢を正す」
「あくびをしない」
「自宅で必ず勉強する」
「トイレはちゃんと流す・・・??」

今思えば、確かに苦し紛れに搾り出した改善事項もあったようですが、冒頭に紹介したように、現在でも事務所の特徴として定着している優れた改善事項も多々多々あることは言うまでもありません。

その後、この週2点を10年以上実践して(理論上は1000項目以上の改善を実施・・・あくまで理論上)、さすがにややマンネリの兆しが見え始めた頃
「週2点改善事項」を改善しようという提案が出され、平成7年から「週1点改善事項」として、学校のような注意しましょう的な提案ではなく、実質的な業務改善につながる提案を心がけましょうということになりました。その後平成12年に取得したISO9001の「予防処置」という規格とタイアップさせるかたちで「予防・改善提案事項」と名称を変え、現在は持ち回りの当番制ではなく、いつでも誰でも気付いたときに、事務所イントラネットの掲示板に投稿するという方法で、私が管理責任者となって継続しています。

事務所を見渡しながら思い返してみると、現在我々が実際業務で使用している各種報告書やチェックリスト、またファイルやOA機器といったハード的なものから、業務の手順や運用方法、また所内のルール、ビジネスマナーといったソフト的な部分まで、この改善活動によって提案検討され、導入、運用、定着してきたものばかりだなと、コラムを進めながら今さらながらに感心してしまいました。

そんな事務所の改善活動で先日ちょっとしたハプニングがありました。

毎月定例で行っている監査課会議で、監査課長が部下に向かって一喝
「これだけ言ってるのに何故改善提案が出てこないんだ!
いい加減バカにしてんのかって言いたくなるぞ!
(心の中では叫んでます『ふざけんなこのヤロー!』)」

実は内々のことでまことにお恥ずかしい話なのですが、この4月辺りから改善の提案件数が極端に減ってしまっていたのです。事実4月~6月の3ヶ月間で提案はたったの5件、内3件は監査課長からという有様でした。この状況を危惧していた彼は、毎月皆に向かってもっと提案するように呼びかけていたのですが、その反応の鈍さにとうとう堪忍袋の緒が切れたというわけです。

彼は更に続けました
「関与先がどうとか忙しいとかは別の話だ。事務所の業務品質を維持するために、絶対に改善を忘れてはいけない。改善は続けなきゃいけないんだ!」


改善活動を行う真の目的は、提案された内容云々の良し悪しではなく、組織の一員として常に問題意識を持って「動く・見る・聞く・話す」ことができる人間力の研鑽にあると思うのです。

今、あなたが目の前で携わっている業務。ルーティン化され、そういうものだと何の疑問も持たずに日常こなしていることって結構多くないですか?

本当にそれがもっとも効果的なやり方でしょうか・・・
本当にそれ自体必要不可欠な業務でしょうか・・・

単純に素朴な疑問を持つ力はありますか?

この力を私たちは『気づき』と呼んでいます。
組織における改善活動は、この『気づき』を培うための訓練なのです。
日常における『気づき』の訓練は、その意識が自分、仲間、顧客、業界、社会へと向く目を養います。
そしてそれは洞察力、分析力、先見力といったビジネスマンに必要な能力の培養へと発展していくのです。
『気づき』の能力の高い人材が集まる組織は確実に伸びます。

だから組織にとって『改善』を続ける意識こそが重要なのです。


同僚の私が言うのもなんですが、ウチの監査課長はかなり優秀です。
勿論今回も所長や私と打合せをして発破をかけたのではありません。
彼はこの改善活動の意味を分かっているから自ら訴えたのです。

彼が皆に本当に言いたかったことは
「思考を停止するな」
「問題意識を持て」
「気づきを発揮せよ」
だったのだと私は思っています。

皆さんの組織には改善のための仕組みはできあがっていますか?



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