「今月お前の自動車保険更新だから 母さんに保険料渡しとけよ」
「エッ? ・・・いくら?」
色白の次男の顔から もともとわずかしかない血の気が引いてゆく
「確か7万くらいだったな」
「ゲッ! ・・・やばっ」
その顔色は 三日ほど徹夜でもしたかのように更に青白くなった
「なんだ 予定してなかったのか・・・ どうすんだ?」
「・・・」
「金なかったら 立替えとくから母さんに分割で返しときな」
「あ、ありがとう」
「お前も自分の車持ってもう2年近く経つんだから 何がいついくらかかるか
維持費くらい把握しとかなきゃいかんだろ?
ちゃんと予定して その金をどうやって払うか 責任もって計画しなさい」
「分かった・・・ 今回はお願い・・・します」
頬にいくらか血色を取り戻し 息子はそう言いながら軽く頭を下げた
とは言うものの、私が息子と同じ二十歳の頃は、保証人になってくれる後ろ盾がなかったこともあり、中古車屋に言われるままに36回のマル専手形を切って車を手に入れたはいいが、それこそ維持費を把握するどころか、その手形を落とすのに毎月四苦八苦しながら生活し、ガソリンスタンドでは「レギュラー満タン!」の一言さえ言えなかったものである。
オヤジの立場になって子どもたちに分かったようなことを言ってるが、以前は言った後で 『そういうお前はどうだったんだ? そんな偉そうなこと言えるのか?』と己を振り返り、ちょっとした自己嫌悪に陥ることも少なくなかった。
しかし、何年かオヤジを経験するうちに、やっぱり親は子どもに対して分かったようなことをちゃんと言わなきゃいかん、と考えるようになっていた。
自分が過去にできなかったこと、分からなかったことを人に教えたり諭したりしてはいけないなんて言い出したら、それこそ誰一人、相手に対してものを言うことができなくなってしまう。
特に親子間では、親が若かりし頃できなかったことでも、子供に対しては「そうしなさい」「こうすればいいんだよ」と繰り返し教え諭すことで、知らずして親自身の包容力が育まれたり、日常の所作が変わったりする。それは、子どもに諭すことイコール自分をチェックすることになるからだろう。
子どもが親をホンモノの大人に成長させてくれると言われる所以でもある。
但し、そうなるために忘れてはいけない条件が一つある。それは、相手のことを本気で思いやり、相手の立場になって分かったようなことを言うことだ。
自分が気に入らないとか、ストレスのはけ口として怒鳴り飛ばすなんてのは論外・・・と言いたいところだが、私の周りでもそんな光景を目や耳にすることがまだまだ多い。
また、相手の立場をどう捉えるかはこちらの主観なので、ここにも相応の注意が必要になる。自分の描く相手の立場というものが、自分勝手な思い込みであってはならない。
そうなってくると、自分が発した言葉に対して「俺はどうなんだ?」と自問自答することは、ある意味とても重要なことかもしれない。自己を振り返ることで、それが相手にとって本当に大事なことかどうかを我がこととして捉えることができるからだ。
今発した一言が、相手の成長を願うアドバイス(助言)なのか、自分の気分を満足させるためのコンパルション(強要)なのか、そこの違いが受ける側にとって、心に浸み込み言葉となるか、まったく受け入れられない言葉となるか、いずれにしても真逆の結果をもたらすのである。
そして、残念なことに後者に終始する人ほど、それが自分本位のコンパルションであることに気付かず、おまけに「あいつはいくら話しても全然言うことを聞いてくれない」などと嘆く。
至極当然のことである。言ってる自分を満足させるための言葉を一所懸命並べたところで、受ける側がそれを聞き入れるはずはない。親子でも、先生と生徒でも、友人同志でも、そしてビジネスの世界でも、そこに例外はないと私は思う。
この11月、川崎会計事務所は新年度を迎えました。
法人としては第25期、通算31期目に突入です。
今期の基本方針は「経営監査の実践」です。これは、会計事務所の本来業務である税務代理、税務書類の作成等において、関与先企業の法的防衛を確保すべく、質の高いサービスを継続的に提供することは当然クリアすべき業務であると認識したうえで、現在最も求められる関与先企業の経営支援を標準業務として実践することを目標とする方針です。
この「経営支援」という業務には、会計事務所としての立場での様々なアドバイスやサゼッション(提案)が当然に求められると思います。
あくまで我々の立場で行う支援業務は、正確な会計帳簿から導かれる営業実績の推移や予測、加えて資金繰り実績等を中心とした業績報告。そして、過去実績と将来の経営ビジョンに基づく経営計画の策定などが主となります。
私たちは、この業績報告については原則毎月、経営計画については単なる翌期の予算だけでなく、必要に応じて中期経営計画や経営改善計画策定の支援を積極的に実践することを目標に掲げました。
ただ、経営コンサルタントではないので『こうすれば儲かる』的なアドバイスはできませんが、関与先の皆さんの健全な発展そのものが、私たちの喜びと思わずにはいられない域にまで達することを目指し、皆さんに対して我がこととしてのアドバイスができるよう、しっかり取り組んでいきたいと思います。
「お父さん 来年3月車検なんだけど いくら位かかるかな?」
「お前の車なら特別な修理がなきゃ 12万ってとこかな」
「うっそ! そんなかかるんだ・・・ 自動車税って5月だよね?」
「そうだな お前の車は34,500円だ」
「お父さんってさぁ 何でそんなに税金のこととか詳しいの?」
「何でって・・・(こいつまだオヤジの仕事を知らんのか?)
まあ お前が自動販売機のメンテや修理ができるのとおんなじだ
そうだ どんな自販機で飲み物買うのがいいか アドバイスしてくれよ」
「自分の飲みたいヤツ売ってる自販機が一番じゃね?」
「・・・ごもっとも!」
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