2009年7月31日

対処

「ケータイが無いんだって・・・」

帰る早々娘が携帯を無くしたようだとカミさんからの報告

「いつから無いの?」

「午後プー(ウチの愛犬です)の散歩に行ったときからみたい・・・」

「ちゃんと探したの?」

「ウン・・・部屋も散歩のコースも探させたけど・・・無いって」

「で? あいつは今何やってるの?」

「部屋にいるんじゃない?」

「お前は・・・それで終わり?」

「何が?」

「何がって・・・のんきにテレビなんか見てていいの?」

「もう一度家中よく探して無かったらお父さんに相談しなさいって・・・」

「それだけかい・・・まあいいや・・・あいつ呼んでくれる」

暫くして娘が下りてきた

「・・・おかえり」

「何やってた?」

「・・・ちょっと寝ちゃって」

「ッタク!・・・顔洗ってこい!探しに行くぞ!」


人は誰でも色々な失敗をします。
本当に数え切れないほどのミスを日々繰り返しながら生きています。

大切な物を無くしてしまったり、大事な約束を忘れてしまったり、大きな事故を起こしてしまうような、それこそ一大事と言える失敗もあれば、弁当忘れちゃったとか、コーヒーこぼしちゃったとか、シャツ後ろ前に着ちゃったなんて笑って済ませられることもあります。

ただ、こういった様々な失敗に共通して言えることは、起きてしまった事実に対して後悔したり落胆したり、やたら原因究明や犯人探しばかりするのではなく、機を逸することなくどう対処するかが最も重要なポイントだということです。

もちろん失敗を引き起こしてしまったその時の気持ちや行動を反省し、原因を認識して同じ失敗をしないように注意しようとする心がけは必要ですが、起きてしまった事実に対して、自分が今何をしなければならないか、何ができるのか、そのしなければならないこと、できることを先ず本気で精一杯やることが何より重要です。

「なんで無くすの!」とか「どうして忘れるの!」などと、つい口走ってしまう(ウチのカミさんのような)親御さんをよく見かけますが、なんでとかどうしてが分かれば誰も苦労しません。しかも「だからあんたは・・・」なんて思い出したようにその失敗とは無関係な話を持ち出して、相手の全人格まで否定するような物言いをしてしまうことも往々にしてあるように思います。

何の失敗もしない人間なんてこの世にいません。最初から失敗しようなんて考えてる人間もいないでしょう。逆に失敗を恐れていては何もできないのも事実です。だから失敗すること自体は単なる事象であって、それがその人の価値や評価を下げるとか、その人自身を否定するようなものではないのです。

大事なのはあくまで失敗したあとの対処です。どういった対処をとるかでその人の人間力が計られもするし、その経験を次に活かすことが人間力を育む要因にもなると思います。「失敗は成功の母」であるとか「クレームこそビジネスチャンス」などと言われる所以もこの辺にあるのではないでしょうか。


私もこれまで失敗ばかりの人生を右往左往しながら生きてきた一人だからでしょうか、子どもたちが失敗したこと自体を叱責したことは一度もありません。しかし、その失敗に対しての対処が納得できないときは決して放っておくことはしませんでした。というより、そこは敢えて厳しく対応してきたつもりです。

今回も娘が携帯を無くした事実に対して叱りはしませんでしたが、「無い」と気づいた後の態度や行動は娘も、そして親としてのカミさんも明らかに不十分でした。

仕事から帰り、まだ少し明るかったので、私は娘を連れて犬の散歩で歩いた道を辿って、どの段階まで持っていたのかを思い出させるように話を聴きながら一緒に探し、家に戻ると娘には自分の部屋を大掃除するよう指示し、私とカミさんはトイレから玄関や洗面所までもう一度家中くまなく探しました。
みんなで一通りできることはやってみましたが結局見つからなかったので、私は近くの交番に遺失物届けの電話をかけ、携帯会社に連絡してオートロックと回線停止の手続きを済ませました。

私の行動を無言で見ていたカミさんは何も言いませんでしたが、その表情からは「無い」と聞いてから数時間、ただ探しなさいという言葉だけの対処をしていた自分に対する親としての反省の色が少し見えました。


失敗というのは自分一人で解決できる場合も多少はありますが、そのほとんどは必ず周囲の誰かしらに迷惑や負担をかけるものです。だからこそ、起こしてしまった後の対処を誤らないようにしたいものです。



「お父さん・・・あの・・・ゴメンなさい」

寝る支度を済ませた娘が今日初めて謝ってきた

「ああ・・・たぶんもう出てこないだろうから
明日お母さんと機種変更の手続きに行きなさい」

「・・・はい」

「無くしてしまったことは仕方がない
でもその後のお前の姿勢が気にいらない!

先ずお前にとってはとても大切なものだろう?
それに携帯は色んな情報が入っているから
もし変な奴に拾われたら悪用される可能性もある
免許や財布を無くすのと何も変わらないんだよ

それが無くなったんだからうたた寝してる暇があったら
親に言われなくても部屋中全部ひっくり返す位必死で探せよ!
真っ暗になるまで何度でも心当たりの場所を探せよ!

それがお前にできることだろう!
すぐにやらなきゃいけないことだろう!
失敗したときに何が本当に大事なのか
しっかり頭に叩き込んでおきなさい!」

「ハイッ!」


久しぶりに娘を真剣に叱った一日でした




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