『負けちゃったわ・・・』
『バックサイドで見てた・・・完全に自信なくしちゃったね』
娘のおそらく高校最後の出場試合になるであろう公式大会は
そんなカミサンとの短いメールのやりとりで幕を閉じた
今春最終学年となってやっと選抜メンバーに残れるかと
本人も昨年秋の新人戦あたりから必死にがんばっていたが
(~3ゲーム差の落とし穴~2008/11)
毎年恒例のスーパー1年生の出現によりその道は絶たれ
先日開催された最後のインハイ予選にも出場できなかった
選抜を外れ、練習ではメンバーの玉出しや玉拾いに回り
大会や強化試合では後輩たちと一緒に準備と応援に回り
それでも腐らずに部内のムードメーカー役に徹していたようだが
肝心の自身のスキルとメンタルはここ数ヶ月で明らかに後退していた
前日行われたダブルスでは、やはり選抜外の後輩とのペアで臨み
それでも意地を見せて何とかベスト8までは勝ち上がったものの
準々決勝では第1シードに0-6で完敗
その1回戦から久々に娘のプレーを観戦した私は
結果勝った試合でも、以前に比べてボールへの執着心はなく
ミスする度に暗い表情でうつむくその姿に
「こんなに変わっちゃうかなぁ・・・」という驚きさえ覚えた
そして最後のシングルス戦を控えた朝
「試合を楽しんでこいよ」とだけ娘には声をかけたが
私らが思っていた以上に彼女が失った自信は大きく
とても試合を楽しむ余裕などなかったようだ・・・
私ら夫婦もOB、OGである娘の高校の硬式テニス部は、私らの現役の頃とは大違いで、現在男女ともに県内屈指の強豪校となっています。特に女子団体は春の選抜大会で昨年、今年と2年連続全国ベスト8という輝かしい実績を挙げており、当然県内外から毎年卓越した子どもたちが入部してきます。
そんな勝つことを宿命付けられたような部活なので、その選抜組(俗に言うレギュラーで基本8名)に入ること自体が、県大会のベスト8に残るくらい厳しい現実なのですが、メンバーに入れなければ春の全国選抜やインハイなど団体戦のあるメジャー大会には出場できず、練習でもメンバーのサポートに回ることが多くなり、大志を持った子ほど辛い部活になってしまうことも事実です。
OBである私らは勿論、娘にしても進学前からそんなことは百も承知していましたが、当時の彼女はどうせやるなら自分を伸ばすためにも、小中時代からずっと競い合ってきたハイレベルな子達と一緒にやりたいという強い気持ちと、ある程度の自信もあったようで、迷うことなくこの学校のテニス部を選択していました。
私ら親としては、ウチの娘のことだから仮に選抜に入れなくても、最後まで好きなテニスを仲間たちと楽しんでやっていくだろうとそんなに深刻には考えていませんでしたが、単純に選抜を外れたというメンタルの問題だけではなく、明らかに広がっていくメンバーとのスキルの較差を実感する毎日に、これまで自分なりに培ってきた自信や負けん気が急速に揺らいでしまったようでした。
一昨年、当時サッカー部で高校最後の選手権大会最中に、今の娘と同じような境遇にあった次男坊の姿を投稿しましたが(~スタンス~2007/10)、その中で夢叶わぬ挫折感を味わったときに、自分はその対象に向かってどんなスタンスをとるかがとても重要であることを息子に教えてもらったという内容の話を書きました。
今回、娘の姿を通して更に願うことは、今は精一杯無理をしてでも最後までそのチームの一員としてきっちり自分の役割を果たすというスタンスをとった上で、その後の人生においてもその対象に背を向けることなく、形はどうあれできる限り長く続けていって欲しいということです。一時の挫折感に押し潰され「もういいや」と本当に好きなことを切り捨て失ってしまうことこそ、自分にとって大きな損失になるのではないかと思うのです。
人がある時期本気で打ち込んだことは、たとえその時点での結果が自分の思いの丈まで届かなかったとしても、その過程で嬉しくも悲しくも数多くの経験を自らに与えてくれるはずであり、それらの経験は必ずや今後何度もぶつかるであろう様々な壁を乗り越える原動力となり、自己の成長の礎になるものだと私は信じています。
「試合どうだった?」
娘の大会が終わった日の夕方
帰宅した次男坊にカミさんが声をかけた
「オオッ! 準優勝だぜ!」
「ウッソ~ すごいじゃん!」
「どうせビギナー相手の大会じゃネエの?」
ビールを煽っていた私はすかさず冷やかした
「なにー!! これ結構レベル高いんだって~
何たってNBSマイチャン・カップだし!」
「そりゃTSBだろ? いちいちスポンサー間違えんな
それでおまえは試合に出てんのか?」
「マジで聞いてんの? オールフル出場だし
まぁ相変わらず貢献度ナンバーワンじゃネ?」
「自分で言うな…」
「ガチでマジだってぇの! だいたい俺のドリブルって・・・」
高校時代にサッカーでそれなりに挫折を経験した息子は
社会人になった今、当時の仲間たちとチームを組んで
フットサルを楽しみながら続けている・・・
前日は最後かもしれないと母親から聞いて
妹の試合をこっそり見に来ていた
部内での妹のポジションを薄々知っている兄貴は
何も言わないが私らより娘の気持ちを分かっているのかもしれない
夕飯をとっていた妹の表情から察したのか
いつも以上に盛り上げようと私らに絡んできた
そんな不器用な兄貴の精一杯の気遣いに
落ち込んでいた娘が やっと笑った・・・
いつもはとぼけた息子だが 今日はやたらと頼もしく映った
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