2009年2月28日

特効薬

「お土産は何がいい?」

「BBクリーム!!」

カミさんと娘が声を揃えた

「ビービー・・・?」

「ほら おねぇマンズのIKKOがテレビでよく紹介してるヤツよ」

「そうそう あのユンソナも愛用してる有名なヤツだって」

「今や韓国って言ったらBBクリームよネェ~

何かにとり憑かれたかのようなテンションで二人が畳み掛ける

「ヤツヤツって何・・・化粧品? まあ何だか知らんけどあったら買ってくるよ」



「アニョハセヨ~」「カムサハムニダ」「チョンペケスミダ」の3つの言葉だけを携えて、昨年の暮れクリスマス直前に娘の学校の関係で韓国釜山に3日間行ってきました。

韓国といえば今から20年位前に一度、そのときは事務所のリスクマネジメントキャンペーンの表彰旅行で首都ソウルに行かせてもらったことがあります。

当時の韓国はちょうど経済成長の過渡期で、ソウルを中心に各地で大規模な都市開発が盛んに行われており、車社会への変貌を遂げようとする活況の真っ只中にありました。

その一方で過去の戦争などがもたらした反日感情がまだまだ根強く残っていた時代でもあり、出国する直前に添乗員の方から「現地の人の前で『バカ』などの刺激の強い言葉を発しないように・・・」なんて注意を受けたことを覚えています。

また、表彰旅行ということもあって、観光客の物見遊山を満足させる内容だったので、食事やオプションも日本人の旅行者向けにセッティングされたよくあるイイトコ取りの観光旅行だったと記憶しています。

しかし今回の釜山はそういった旅行会社の企画モノではなく、学校の国際交流を目的とした視察旅行として実施されたもので、実際に現地で我々を接待してくれたのは学校の先生や学生その保護者の方々など一般市民の皆さんだったので、逆に韓国の人々が日常を過ごすその場所で通常の生活ぶりを見て聞いて体験することができ、今まで知らなかった習慣や文化の違いに結構強いカルチャーショックを受ける旅行となりました。

皆さんもご存じだと思いますが、韓国は今猛烈なウォン安で日本同様深刻な不況の波に見舞われています。確かに韓国第2の都市と言われる釜山でも現地でお会いした方々からは不景気で厳しい生活環境を強いられているといったお話をあちこちで伺ったのですが、ただ実際にその生活拠点である町の市場や繁華街を歩いてみると、平日にもかかわらず多くの若者が繰り出していて結構活気があり、何というか昭和の終わりの頃の日本にいるような感覚になりました。歩んできた歴史や文化の違いでしょうか、それとも本来持つ国民性でしょうか、現地の方々の表情からは何とかこの悪い状況から這い上がろう、脱却しようという雰囲気が老若男女を問わず強く感じられました。


隣国もさることながら、この日本も現在100年に一度と言われる未曾有(「みぞうゆう」ではありません)の大不況の渦中にあります。

大企業の赤字転落や非正規社員切りそして内定者の取り消しなど毎日不安を煽る記事が新聞紙上を賑わせていますが、私どものお客様もその業種や規模に関わらず、厳しい経営環境におかれながら募る危機感の中で懸命に現業に従事されています。

その厳しさや業況悪化の現実は、もちろん数字を見ている私ども会計事務所の人間が一番よく分かります。そんな私らとしては、生の数字から課題や改善点を経営者の方々と一緒に考え、親身になって助言進言を行うことで少しでも関与先の健全経営のお役に立ちたいと思いながら日々業務に当たっているのですが、そんな折りよく聞かれることがあります。

「何か儲かる商売はないかい?」

確かにそんな商売があったら誰でもやってみたいものです。もちろん経営者の皆さんもそんな商売がないことは最初から分かって仰っているのだと思います。

企業経営に誰がやっても儲かる、誰にでも効く特効薬なんて存在しません。

遠い昔からあれがいいと言えばそれに乗っかり、これがいいと言えばまたそれに乗っかるような商売をしてきた輩がビジネスの世界で生き残った例はありません。中にはたまたま時代の流れに乗って一時的に富や名声を得るものも現れますが、それこそバブルと比喩されるようにそんな信念のない企業が継続するわけはないのです。

私は先のような質問を受けたときは決まってこう答えます。

「他では手に入らない自社製品を持つか、他では受けられないサービスを提供することですね・・・」

ある意味特効薬みたいな話に聞こえるかもしれませんが、この日本にも一握りのこういった企業が存在することは事実です。

しかし私が本当に経営者の皆さんに伝えたいことは、だからそんな製品を開発しましょうとかそんなサービスを提供しましょうということではなく、その一握りの企業に共通するある一つの事実なのです。


それは経営者が決してぶれない経営理念をしっかり持ち続けていることです。


こんなときだからこそ、経営者の皆さんは今一度なぜこの仕事をしているのか、どんな夢や目標を持ってこの仕事を続けてきたのかをじっくり確認することがとても重要ではないかと思います。そしてその思いを改めてご自身の経営理念として掲げ、その実現のための課題を明確にしてこれを一つずつ確実にクリアしていくことが、真の永続発展につながる手立てではないかと思うのです。

私ども会計事務所も含め、ほとんどの中小零細企業は同業者との競合のなかで事業経営を展開しています。限られた顧客に対して同じ仕事を提供する事業者が同じ地域にたくさんいるわけですから、ユーザーが事業者を選別するこの時代に誰もが等しく生き残っていけるわけではありません。だからこそ、自社の経営理念を再確認し、全社員とこれを共有したうえで、しっかり汗をかいて顧客に喜ばれる質の高い仕事を確実に提供することが、生き残る企業となるための唯一の方法ではないかと思います。



「ハイ!純正BBクリームクリスマス仕様 コンパクト付きだよー!」

「オーッ!!」

カミさんと娘が声を揃えた

「これが噂のBBクリームか~」

「これで今日から私たちも美肌美人になるのね!」

数十年間紫外線の洗礼を受け続けているカミさんと
現在進行形の一年中真っ黒娘がなんか勘違いしている

「おいおい 美肌美人に特効薬なんてないんじゃない?
女は純粋で素直な気持ちを持った心美人にならなきゃ・・・」

「あ~うるさい! 女の現実は厳しいのよ 藁をもつかむ思いなのよ」

「お母さんお母さん・・・それよりこれいつどうやって使うの?」

「ン?・・・ウン・・・知らない」


あ~あ だめだコリャ!

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