2008年4月29日

アイディア

「お父さ~ん 風呂場の取っ手が壊れて戸が閉まらないよ~」

ある晩自宅の風呂場で息子が騒いでいる

「え~ホントに?・・・またお前が乱暴に扱ったんじゃねーのか?」

「俺じゃねーし! とにかくどうすればいい?」

風呂場に行ってみると、どうやら上下に動かして開閉する取っ手内部のスプリングが切れたようで、ダランと真下に落ちたままになっている

「こりゃ業者に頼まなきゃ直せないなぁ・・・
お前試しに手で押さえたまま風呂入ってみるか?」

「冗談言ってる場合じゃねーし、俺裸だし、このままじゃ風邪ひくし」

「お前その“しィしィ”言うのやめろ!まったく『しィのみ学園』の生徒か!」

「そんな学校知らねーし!大体スベッてるし・・・」

「何ごちゃごちゃワケの分からないこと言ってるの」

スッタモンダしているところにカミさんが登場した

「どうしたって?・・・ふ~ん・・・・・・ちょっと待ってて」

カミさんは台所からゴム製の吸盤と、髪留めに使うゴムひもを持ってきた。そしてダランと落ちた取っ手の先にゴムひもを巻きつけ、その反対側を吸盤に縛り付け、その吸盤を取っ手を上げた状態のところまで引っ張り上げて取っての上のステンの部分に貼り付けた。この間僅か15秒・・・あんた、しょ、職人?

「これでよしと・・・ほら閉めてごらんなさい」

“カチッ!”

「オーッ!!」

私と息子は同時に大きな歓声を上げた

「すっげーお母さんってさすが天才! お父さんさすが中学技術3!」

「あれ?お前何で知ってんの?まっ、とりあえずこれで当分使えるな・・・」

「・・・これ応急処置だし、ちゃんと直した方がよくね?」

「お、おうよ・・・」



どんなご家庭にも、ちょっとしたアイディアを活かした暮らし向きというか、そのウチならではの生活の工夫というものがあるのではないでしょうか。

私が仕事でお邪魔する顧客の皆さんの会社やご家庭でも、あちこちに我が家でも参考にしたいようなアイディアや工夫を発見することがあります。


玄関を開けると癒し系の芳しいアロマの香がいつも漂っている。
8段の回転式靴入れで大家族の何十足という靴をきちんと整理している。
大き目の収納の真中に棚をつけて合理的により多くの物を収納する。
カレンダー式の薬箱でお年寄りが間違いなくお薬を服用できるようにする。


おそらく毎日の仕事や生活を重ねる中で、こうした方がもっと合理的に、或いは簡単、快適、正確に物事が進むのではと、アイディアが閃いて、そこに工夫を凝らして定着したことなのでしょう。

このコラムを始めた頃、企業が生き残るためには「改革と改善」が重要というテーマで何本か投稿しましたが、その改善すべき事柄をどんな方法で具現化するかという段で必要なのが、アイディアと工夫だと思います。

何らかの要因によって業績低迷に陥った企業が、新規顧客を開拓しようとか売上げを挽回しようとしたときに、ただ「がんばろう」とか「意識しよう」などと声を掛け合うだけでは成果は上がりません。

その要因を外部に転嫁するような思考パターンになってしまっていては残念ながら論外ですが、その要因をしっかり分析した上で、顧客を増やすためのアイディアは?そのアイディアを活かす工夫は?と掘り下げていく思考パターンを是非定着させたいものです。

事実この厳しい社会情勢の中でも、業種や規模を問わず、多くの顧客に支持されて良好な業績を挙げている中小零細企業は存在します。そしてそれらの企業に共通して言えることは、顧客や地域社会に喜ばれる商品やサービスを提供するためのアイディアを日常的に考え出し動いていることです。

年に1度のキャンペーンのように構えて行うのではありません。少しくらい失敗しても結果が出なくても、それを踏み台にして、そこからまた新しいアイディアを次々と考えていくのです。こういった企業はそれが常態化しているところがすごいのです。更にそんな企業では、そこで働く従業員さんが夢を持って仕事に励むための快適な職場環境に対しても、色々な工夫を実践していると言われます。

私どもの事務所では、そんな知られざる元気の良い企業さんを紹介する「経営者の四季」、そして営業、経理、労務といったあらゆる分野の業務に関する情報や工夫を提案する「マネジメント・レターP!」を毎月顧客の皆様に提供しています。

それは言うまでもなく、自ら考え出すアイディアを駆使してそれを提供し、そのアイディアがお客様に受け入れられたときの達成感がやりがいのある仕事そのものであり、その達成感を得るための工夫を凝らす大切さを皆さんに感じていただきたいからなのです。

この情報誌に書かれていることは決して理想なんかではありません。現に実践し、成功しているお仲間がいることを知っていただき、そして何か一つでもお仕事のお役に立つよう有効に活用していただければ幸いです。



「お父さ~ん また取れちゃったよ~」

数日後、風呂場から情けない息子の声がまた響いた

「やっぱダメか~・・・ ン? 何だ吸盤が外れただけじゃないか」

「最近これすぐ取れちゃうんだよ」

「そうか・・・じゃ明日もっといい吸盤買ってくるわ」

「・・・だからちゃんと直した方がよくね?」


我が家の風呂の取っ手は、カミさんのアイディアで今も健在である。
吸盤はより強力な3個目となったが・・・

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