「これ見て・・・」
家内が差し出した娘の成績表に暫し見入った
「あ、赤点?・・・理科?・・・ほんとに?」
振り向いて『どうすんの?お前』って感じの視線を娘に送る
『煮るなと焼くなと好きにせー!』みたいな表情で
煎餅をかじりながら視線を返す娘
「あっはっはっはー!ほんとにあるんだこういうの・・・
こりゃ記念にとっとかなきゃいけねーなーおい!」
笑うしかない状況に意味不明の言葉を発すると
「えへへ・・・まいったまいった」
ちょっと悪びれた照れ笑いを娘が返す・・・と、その時
「ウオーッ!あんたたちー!いい加減ふざけてる場合じゃないでしょー!」
ちょっと触れたら崩れ落ちそうに固まっていた家内が・・・吠えた
我が家に安住の日が訪れるのはいつのことだろうか・・・
今年高校に進学した娘の成績は、正直半ば予想はしていましたが、予想をはるかに超える現実にはさすがに冗談も言ってられなくなりました。部活部活の毎日で、朝は7時までに学校に行き帰宅は毎日夜の9時、土日は試合に遠征、おまけに授業中が唯一の休憩時間などと普段からうそぶいていましたから、一体いつ勉強するの?という状況は分かっていたことです。だから成績が悪いからといって娘だけを責めるわけにはいきません。責任の一旦は放っておいた私ら親にもあるからです。
娘も好きなテニスをやるために自分でそういう環境の高校を選んだわけなので、勿論言い訳なんかはしませんが、今回はかなり真剣に応えたようです。「勉強しなきゃマジやばっ!」と、やらなきゃいけないことは頭では分かっていたようですが、せいぜいテスト前の一夜漬けがいいところ。とりあえず部活は一生懸命やってんだから何とかなるだろうという甘い考えは、現実を知りどこかへ吹っ飛んだようでした。
夏休みに入るその日の夜、娘と2人で話す時間を持ちました。
敢えて平気な顔をしていた夕方とは一変、娘は曇った表情でうつむいています。
「このままじゃ好きなテニスもできなくなっちゃうな」
「あたし・・・勉強する・・・」
「どうやって?」
「・・・」
「お父さんが指示してもいいか?」
「・・・うん」
「それじゃ明日起きたら部屋を掃除して片付けなさい。マンガ本やCDなんかは別の部屋の本棚に全部しまって、勉強机には学校の教材だけを整理して並べなさい。お前の場合まずは自分の部屋を勉強するぞっていう環境にすることが先決だ。次に学校行事や部活優先で夏休みのスケジュール表を作りなさい。それでどの位時間が取れるのかをはっきりさせて、空いてるところに勉強の時間を入れてみなさい。できれば2時間、最低でも毎日1時間は予定して、作ったらお父さんに見せなさい。それから明日中に必要な参考書や問題集を用意するから、学校の課題と併せていつ何をやるか明日の夜一緒に計画しよう。いつも言うけど、国・数・英はとにかく問題を何回も解くこと、今回やっちゃった理科と社会はとにかくポイントを覚えること。教科書や参考書をみても分からないところはその日のうちにお父さんに聞きなさい。そして、部屋で勉強をやってるあいだケータイは電源を切って下に置いとくこと。今回のおまえ自身のけじめと本気の証拠としてだ・・・いいか?」
「・・・はい!」
「人間ってみんなそれほど強くなくて、頭で分かっているつもりでも実際にはできないことが山ほどある。やめなきゃって思いながらタバコ吸ってるお父さんも、痩せてやるって言いながらケーキ食ってるお母さんもそうだ。勿論、勉強しなきゃって言いながら結局マンガやケータイに手を伸ばしてしまうお前も一緒だ。要するに本気じゃないんだよ。だけど例えばそれでお父さんが肺ガンになったり、お母さんが20キロも体重増えちゃったなんてことになれば、いよいよ本気で何とかしなきゃと思って行動を変えるだろう?まあそこまで切羽詰らないとできないのが人間の弱いところなんだけどね・・・。ただそうなったとき初めて「分かる」ことと「やる」ことが一致する。そしてそれを続けることで必ず自分の思う姿に「成る」ことができるんだ。お前も今回のことで自分が一高校生としてどういう状況なのかが分かって、本気で何とかしなきゃって思ったんだから、あとは本当にやること、そして続けることだけだ。さっき話したことは、ただやるやるっていう決意表明だけに終わらせないための具体的な方法だから、もう後先のことは考えないで、その日の目の前の課題だけに集中して取り組んでみなさい。大丈夫!お前は勉強ができないんじゃなくてやらなかっただけだから、本気でやれば必ず結果はついてくるはずだ。2学期は先生や仲間連中をあっと言わせてやれ!・・・ついでにお母さんもな」
「分かった、やってみる・・・ ありがとう!」
いつものあっけらかんとした表情を取り戻した娘は、2階の部屋に駆け上がっていきました。
今年の気が狂うほどの暑い夏休みは
そんな娘にとってもまさに灼熱地獄となりました
補習に課題 部活に遠征
しかし、私の目には高校生活の青春を謳歌する
何とも充実した毎日を送っているように映りました
ただ・・・その日本人離れした黒さは何とかならんか
まあ仕方ないか これからこれから・・・
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