「お父さん アサババ元気? 会いに行きたいんだけど…」
年末年始に帰省していた娘が私に問いかけた
アサババとは私の母 彼女にとっては祖母である
「お前さぁ もっと早く言いなさいよ~
今日は夕方から先約があるから無理だなぁ…
また今度帰ってきた時に一緒に行こう」
「そうか…アサババももう八十歳超えてるでしょ?
病気とか大丈夫なの?」
「今年八十四だな でも今の施設は生活環境が良くて
ウチにいたときより元気になってるくらいだよ
あの調子なら百まで生きるから大丈夫だ(笑)」
「ホントに~? じゃ まあヨロシク言っといてね」
「バカ者! 手紙でも書いて自分でヨロシク言いなさい」
「ハイハイ…」
新しい年のご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。
改めまして あけましておめでとうございます 本年もよろしくお願い致します。
「死と向き合って生を学ぶ」2015年のっけから少々重いタイトルで恐縮ですが、今年の正月休みに帰省した娘の姿を通して感じた思いを綴らせて頂きます。
昨年大晦日から正月四日まで、東京で働く今年24歳になる娘が帰省しました。
移動時間を考えると正味三日間しかない休みの中二日間を高校時代の友人と泊りでスキーに出掛けたので、自宅で私ら両親と一緒にいたのはほぼ一日だけというスケジュールで、今回もあっという間に東京に戻っていきました。
向こうでの仕事もかなり忙しいようですが、相変わらず何とも慌ただしい里帰りです。
娘が一日だけ自宅にいたその日、彼女は隣の実家に住む母方(カミさん)の祖父母と朝から半日近くの時間を過ごし、夕方から施設に入っている父方(私)の祖母に会いに行きたいと言い出しました。
実家の祖父母は隣に住んでいるので、当然ですが娘に限らず孫である子どもたちはみな帰省すれば必ず顔を出します。
そして頭はしっかりしているのですが、食事の時以外はほとんどベッドで横になっている祖母の傍らに座り、手を握って腕や足をさすったりしながら自らの近況を報告し、祖母の健康を気遣う言葉をかけ、明るい顔を見せては祖母を元気づけています。
そしてその後は、やはり頭はしっかりしていますが、腰が曲がってすっかり小さくなった祖父の肩を揉み、一緒にみかんを食べながら談笑するのが常となっています。
彼らは幼い頃からずっと実家の祖父母にはとても可愛がってもらっていたので、みな二人のことを大好きなのはもちろんですが、最近は、二人に余計な心配をかけないように、独り立ちした自分たちが、仕事も私生活もしっかりやっていることを報告するのが、おそらく祖父母への一番の恩返しになると考えているようです。
また、認知症があり、現在老人施設に入っている私の母の方はというと、週に一度私やカミさんが母の大好きな梅酒とクロスワード本を土産に様子を見に行っているのですが、栄養バランスの取れた食事を三度三度規則正しく頂いて、広いお風呂にも毎日入れさせてもらい、同じような境遇の方々とのんびり生活しているせいか、身体の方は私らもびっくりするほど健康になっており、本当に良い施設にお世話になれて良かったと感謝している昨今です。
今回、娘が会いに行きたいといった日は私に先約があって連れていくことができなかったので、祖母はとても良い環境で暮らしているので以前より元気になっていることを話し、また次の機会に一緒に行くことを約束しましたが、そのとき祖母の状態を心配しながら残念そうな表情をする彼女を見て、今までとはまったく違う心境を抱いていることが感じとれました。
「人は生まれたときから死に向かって生きている」
娘だけではなく、兄である二人の息子も、そしてその嫁たちもそうですが、ここ最近の彼らの祖父母に対する気遣いや優しい言動を見ていると、大好きな人に確実に死が近づいていることを、明らかに意識して生きていることが伺えます。
人はいつか必ず死を迎える有限の存在でありそれを身近に感じることで、いま、ここで自身がどのように生きているのかを内観することができるのではないでしょうか。
子どもたちが祖父母の命を尊び、祖父母がいたから今の自分があることに感謝し、その人たちのためにも自身が充実した人生を送ること、それが何より大切であることを、まさに今、彼らは祖父母の生死を通して学ばせてもらっているような気がします。
そしてまたそんな子どもたちの姿が、私ら両親に、彼らの祖父母が悔いのない満足な人生の終末を迎えることができるように、心を込めて残された時間を共有していこうと思わせてもくれます。
ここで言う祖父母の満足な人生の終末、それは彼らの家族である私たちがみな健康で明るく暮らしていることに他なりません。
私は娘のそんな姿に、祖父母の宝である我が家の家族が充実した幸せな人生を送ることができるように導いていかなければと新年早々教えられました。
「・・・じいちゃん・・・じいちゃん」
「お~~ ひな~~ よく来たなぁ~」
次男夫婦が娘を連れて年始にやってきた
曾孫の陽菜と大爺ちゃんは大の仲良しだ
「み~きゃん み~きゃん」
「そうかそうか 一緒にみかん食べようなぁ~」
どうやら毎回みかんで曾孫を釣っているらしい(笑)
しかし 可愛い曾孫を連れて顔を出す
これも立派な祖父母孝行だ
1 件のコメント:
お子様が素敵な大人へと成長されていることが何よりの親孝行、素晴らしいですね。そして、曾孫に囲まれることは、祖父母様にとって、何よりの幸せ。吉田さんご一家はまさに家族の鏡です。これもひとえに吉田さんご夫婦、ご両親それぞれの人生観と信念の賜物と思います。夫婦になること、子供を持つこと、子供を育てることの人生観と信念がきちんとされているからですね。
私事ですが、昨日伯父を亡くしました、92才でした。あいにく実子がおらず、少しだけお手伝いしていましたが、伯父の姿を見ながら、老いというものを考える時間がもらえました。最後まで弱音も吐かず、自分の立場を最後まで貫き、迷惑をかけることなく、眠りながらみんなに囲まれて旅立ちました。自分の主張ばかりしがちな昨今、老いることの意味も少しだけ勉強出来た気がしました。
自分が信念ある人生を歩むことで、子供たちにも何か伝われば嬉しいと思います。気付きの年始めでした。
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