「ちょっと~ まだ飲んでるの~?」
カミさんが起きてきた・・・
「んっ?どうした? っていうか いま何時だ?」
確かついさっきまで3日の夜だったはず・・・
「どうしたじゃないわよ もう朝の6時だっての!ったく・・信じらんない」
どうも4日の朝になっているらしい・・・
「まあいいや お前も一緒に飲れ こいつらの話おもしれ~ぞ~」
私は二人の息子とすっかりいい気持ちになって盛り上がっていた・・・
「ちょ ちょっとまだ飲むの~? もう寝たら?」
小言をいうカミさんだが なぜか表情はまんざらでもなさそうだ・・・
「おはよ~ ありゃありゃ みんな相当酔ってるね~ ずっとやってたの?」
しばらくして寝ボケまなこの長女も起きてきた・・・
「おー 起きたかー よ~しお前もここに座れ~
みんなで宴会だ~ お母さーん つまみつまみ~」
「・・・」
このゴールデンウィーク、東京で暮らす長男と長女が帰省して、我が家では久しぶりに全員が揃って(近所迷惑なほど)賑やかな休日を過ごしていました。
とは言え、彼らはまだまだ青春真っ盛りの若者。このチャンスを逃してなるものかと、毎日朝方まで旧友と遊び呆けているので、実際に親子が一緒に過ごす時間なんてほとんどないのが現実です。
今回も、全員が揃う初日の夕食時だけはどこへも行かずにジジババ孝行せぇ!と号令を発し、孫に会うことを楽しみにしていた互いの祖父母を連れ立って、なじみの中華料理屋さんに赴き、みんなで外食したくらいです。
そんな調子で故郷での僅かな休日を過ごし、明日は二人とも東京に戻る予定の5月3日の夕食後、たぶん初めからそのつもりで自宅で夕飯を取っていた長男が「俺も少し飲もうかな」と呟いて、テレビを見ながら晩酌をしていた私にグラスを差し出し、同じダイニングのテーブルに着きました。
心優しいウチの長男は、盆と正月、そして仕事が許せばこのゴールデンウィークと、年に2~3回の頻度で帰省するのですが、ここ何年か帰ると必ず一度は私と二人で飲む時間を作ろうとしてくれます。
私が、息子が幼い頃から一緒に酒を飲むことを楽しみにしていたということを、このコラム(2007/03『乾杯』)を見て知った長男が、最初のうちは私に気を使って自らそんな時間を持とうとしてくれたのだと思います。
オヤジとしてはそれだけでも嬉しい限りですが、最近はどうやらその長男の方が私と一杯飲ることを本当に楽しみにしているようです。
“一緒に飲む”と言っても、オヤジの私が一人でそう位置付けているだけで、さほど強くない長男にとっては酒は二の次で、どちらかと言えば自分の仕事や近況を思いつくままに話し、気にかかる悩みや疑問を私に投げかけ、それに対する親父としての考え方や、親父が若いときはどうだったのかを聞いたりしながら、現在の自身の仕事への向き合い方や生き方といったものがブレていないかを確認し、リセットする時間と位置付けているように感じます。
だから最近は私の方が息子の話を聴いている時間が多く、それだけに先に酔っ払って無責任なことをいうわけにもいかず、手前味噌ですが、これでも初めの1~2時間はなかなか中身の濃い時間を過ごしているのです。
今回そんな息子との至福のときが夜を徹してしまったのには当然わけがあります。
いつもの調子で二人で飲っていたところ、夜10時をちょっと回った頃だったでしょうか、おさんどんを終え、風呂から上がったカミさんも参加して、三人で改めて飲み直そうという状況になりました。
最初ハイテンションで久々の息子との会話をつまみに楽しそうに飲んでいたカミさんは、まあ彼女としてはよく頑張ったのですが、夜中の零時頃、人の話に相槌を打っているように思わせて実は爆睡しているという得意技を披露しつつも撃沈。寝ていることに気づいた息子に床に着くよう促されてあえなく撤収しました。
本格的に二人になった私と長男は、心地よい酒の力も手伝って、オヤジが禁煙したホントの理由(2009/12『今年の重大ニュース』)やら、息子の彼女の話やらでますます盛り上がっていました。
そして、そろそろお開きってもんかなと思った深夜2時、高校の同級会に行っていた次男坊が幸か不幸かちょうど帰ってきてしまったのです。
いつもなら「ただいま」だけ言って、風呂に入ってからそのまま自分の部屋へ直行する次男ですが、さすがにこの時ばかりは盛り上がっている我々二人を前にして
「まだ起きてんの?」 と口走ると、すかさず兄貴から
「この時間まで遊んでる奴が言うか!」 と返され、結局ここから男三人で飲み直すことになったのです。
しかし、その後の息子達との会話は、本当に時間も眠気も忘れるほど楽しく、そして私にとっては大きなサプライズで満載でした。
私は彼ら二人が中学生を過ぎた頃から、兄弟喧嘩をしているところを一度も見たことがなかったのですが、実はしょっちゅう取っ組み合いの大喧嘩をしていたというのです。
「母さんは知ってるよ」というので、なぜ親父の前では喧嘩しなかったのか聞いてみると、二人揃って「怖かったから」と一言。
私の前で取っ組み合いの喧嘩なんかしたら、逆に二人とも家から放り出されるんじゃないかと思っていたそうです。まったくこんな優しいオヤジをつかまえて何ともけしからん奴らです・・・と言うのは冗談ですが、確かに私は結構厳しい父親でした。
特にやることなすこと何でも初めてだった長男は、物心ついた頃から高校生辺りまで、それこそ何度私に引っ叩かれたり投げ飛ばされたりしたか分かりません。そんな長男を反面教師にした弟と妹は当然要領がよくなるので兄貴ほどではありませんが、それでもよその家庭のお子さんよりは厳しい環境で育ってきたのではないかと思います。
勿論、私は理由もなく感情だけで子供たちを叱ったことなど一度もありません。
私は彼らが幼い頃から次の三つのことを大事にするよう等しく話してきました。
「約束を守る」「嘘をつかない」「他人に迷惑をかけない」ということです。
だから、子どもたちがこれを守れなかったときには本気で叱りました・・・私がホンキだったから怖かったのは当然です。
しかし今、何より嬉しいのは大人になった彼らが今でもその大事な三つの生き方を覚えていて、私の父親としての思いをしっかり理解してくれていることです。勿論彼らは叱られたことを喜んでいるわけではありませんが、自分に非があったから叱られたということを今はきちんと認識しています。
こんなことも親子で時間を共有して、コミュニケーションしなければ分かり合えないことです。
夜を徹して飲むなんて端から見ればバカなことかもしれませんが、親子でこんなバカができるなんて、私は素敵な家族を持ったなあと本当に嬉しく思っています。
まんざらでもない表情だったカミさんも、そんなオヤジと息子の様子を見ながら『ずっとこんな時間が続けばいいな・・・』と思っていたそうです。
「・・・あれ? みんな無事帰った?」
夕方6時 昼と夜が完全に逆転してしまった
「ハイハイ お父さんにヨロシクと・・・身体大事にと承っております」
「いつ寝たか覚えてないんだけど 結局何時までやってたのかね?」
「楽しかったら何時でもいいんじゃない?
それにしても魔のゴールデンウィークになっちゃったわね・・・」
「いやいや・・・俺はますますあいつらが好きになったよ」
「・・・きっと向こうもそう思ってんじゃない?」
「ああ いいゴールデンウィークだった」
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