「ナイスショット!」
秋晴れのコースにオヤジたちの気分爽快な声が響きわたる
まっすぐ飛べばすべてナイスショットなのだ!
「ファー」・・・ 「ファー」・・・ 「ファー」・・・
あちこちのコースからオヤジたちのダミ声がこだまする
せっかく来たからには隣のコースだって使わなきゃ損だ?
「いやー昨日稲刈りだったモンで足腰痛くて距離がでねーゎ」
「何言ってるだい!俺なんか肩上がんなくてまともに当たんねーょ」
「わざと林に打ち込んできのこ採ってくるのやめろって」
良くてぎりぎりふたケタ、もともと煩悩の数くらいで回るオヤジたちの
そんな会話がいたく楽しいコンペを私はとても気に入っている
私の住んでいる町内にはオヤジさんたちのゴルフ愛好会があります。
「アルバトロスゴルフクラブ」と名称だけは奇跡に近いクラブです。
メンバーは30数名、その中心は50代半ばから70代前半、40後半の私はバリバリ若僧の部類です。従って当然カートを運転し、オヤジのよく曲がるボールを捜しに山を駆け上がり、パターを4本持ってグリーンに走り、フラッグを抜き差ししてまたカートへ・・・なんて「お前はキャディーか!」という仕事ももちろん率先してやることになります。
でも10数年前にこのクラブに誘ってもらったおかげで、結婚してから移り住んでほとんど知り合いのなかった私が、今は町のどこへ行っても気軽に声をかけ合えるようになり、気のいいオヤジさんたちとの多くの縁を持つことができたのも事実です。
だからいつもセルフで回るこのコンペで、キャディー代わりに動くこともまったく苦にならず、それどころか大先輩のオヤジたちに向かって「そんなにリキんだら血管切れるよー」などと軽口を叩きながら結構楽しんでやってます。
時間的、経済的なこともあって、プライベートではほとんどやらなくなったゴルフですが、そんなオヤジさんたちとの縁を大切にしたくて、年3回行われるこのコンペにだけは可能な限り出るようにしているのです。
先日今年2回目のコンペがあり、会長さんの提案で近くの公園で焼肉でもやりながら表彰式をやろうということになりました。
酒屋からビールサーバーを借りて、大型の鉄板4台を配置して20数名が参加しての大盛り上がりの会になったのですが、私は自分の近くの鉄板周りにいた60歳前後のオヤジさんたちと飲みながら、その話の内容にちょっと驚いてしまいました。
あるオヤジさんが「いやーニュージーランドは本当にいいよ!」
と昨年ご夫婦で旅行に行ったときの話を始めると
横にいたランニングにねじり鉢巻といういでたちのオヤジさんが
「そうそう・・・オレも母ちゃんと行ったときラフティングってのをやったんだが、ボートがひっくり返ったときはホント死ぬかと思ったって! 船頭の兄ちゃんがわざとあれやるだよな、『まったくコッチの歳考えろ』って言ってやったダヨ!
日本語でー、だーっはっはっはっー(笑)(笑)!」
すると今度は隣の作業つなぎを上だけ脱いだオヤジさんが
「ニュージーランドも確かにいいが、カナダもかなりいいじー」
「おーカナダね!バンクーバーとか?」
「あそこは一週間位いなきゃ本当の良さは分かんねぇぞ」
「あの何とかって滝は見てきたかい、なんつったっけなーあの滝・・・」
「???」
「4年2組の“だぼ”」なんて言いながらゴルフでもろくに横文字を使わないオヤジさんたちが、海外の、それも自分たちが経験した話で盛り上がっているのです。人は見かけで・・・とはよく言うものの、そのあまりのギャップに私は正直びっくりしました。
そしてただ相槌を打って聞いていた私は、目を輝かせてそんな話をしているオヤジさんたちの多くが、巷で騒がれている「団塊の世代」であることに気づき、またまた“はっ”としました。
2010年問題と言われ、その経済効果などが良くも悪くも注目されている団塊ですが、その年代だけを考えれば、確かに時間的にも経済的にも余裕ができて、やっと自分のために有意義な時間を使えるといえば確かにそうでしょう。
しかしその年代になればみな同じというわけではなく、やはり心身の健康と人生に対する旺盛な好奇心が伴わなければ、誰もが充実した時間を過ごせるというものではありません。
世間では「団塊の世代」の人々は単にその人口の多さだけではなく、生まれ育ってきた時代背景などから、
とても闊達で行動力があり好奇心や競争心も強いと言われています。
かくいう田舎丸出しの我が町内のオヤジさんたちでさえ
毎年夫婦で海外旅行をする
日本中の旨いものを食べ歩く
全国の天然温泉を制覇する などなど・・・
本当に若々しく元気なのは明らかで、傍にいても生きる力が強いと感じます。
今回、まったく利害関係なしでお付き合いさせていただいている身近な団塊オヤジたちのちょっと・・・いや、かなり違った一面を垣間見て、巷で「団塊の世代」に対して言われていることは結構ありかもと思いました。
実際にどんな影響が出てくるのかは分かりませんが、2010年に向けて社会の状況にも注視しつつ、私はやっぱりこのオヤジさんたちとのやかましいコンペもずっと楽しんでいきたいと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿