2013年6月30日

おめでとう!~Congratulations~

「両家を代表いたしまして一言お礼のご挨拶を申し上げます

皆様 本日はご多用中且つご遠路のところを
二人の結婚披露宴にご臨席賜りまして真にありがとうございます

特に 新婦のご関係の皆様におかれましては
九州は鹿児島という 本当に遠いところから
二人のお祝いに駆けつけていただき 心より感謝致します

また先程来より 心温まるご祝辞の数々 
そして過分なるご芳志を頂戴いたしまして重ねて御礼申し上げます…

え~ここまでは台本通りなんですが…

この後も原稿用紙二枚位のカチンコチンに固い挨拶を考えて暗記してきましたが
この場の雰囲気にまったく合わないので…あとはアドリブで行かせてもらいます」

披露宴クライマックスの両家代表の謝辞
新郎の父である私はまったく想定外の心境で会場の皆様に対峙していました…




平成25年6月22日、長男夫婦の結婚披露宴が東京で執り行われました。

3年前の8月のコラム(「反面教師」http://dairicolum.blogspot.jp/2010/08/blog-post.html)でもご紹介しましたが、東京で出逢った九州鹿児島出身の彼女との良好な関係を築きながら、約束通りめでたく添い遂げてくれました。

私は以前ホテルマン時代に、200件近い披露宴のサービスと20件以上の司会を経験してきたので、一通りの段取りは心得ているつもりでしたが、何しろそれは30年も前の、媒酌人やら当地信州ならではの鉄漿親(はねおや)と呼ばれる多くの後見人が新郎新婦と一緒にひな壇に並び、披露式と披露宴がきっちり区分された形式が一般的だった頃の話で、最近の若者の結婚披露宴など出席したこともないので、一体どんなことになるのだろうと期待と不安に胸を躍らせながらその席へと臨みました。

その詳細は文章にしても上手く伝わらないと思うので
以下、画像をご覧になりながら雰囲気を感じて頂ければ幸いです。


先ずはチャペルでの結婚式
親族、友人に囲まれて心地よい緊張感の中で厳かに



新郎新婦の入場と同時に友人たちが皆立ち上がって大きな拍手と祝福の声援
主役の二人は満面の笑みで皆に声をかけ タレントのようにこれに応える



ケーキ入刀  終始 笑顔~笑顔~笑顔  とにかく明るい



その流れからの お約束のファースト・バイトでも会場大爆笑



薩摩おごじょの覚悟のチャレンジ  洒落の分かる嫁さんである



さらに会社の同僚や友人たちの笑いあり涙ありの余興で会場はお祭り騒ぎ



お色直しの再入場はキャンドルサービスではなく
新郎がビアタンクを担いでの生ビールサービス



各テーブルで一気飲みさせられた新郎が汗だくでフラつくので
「お父さんによこしなさい」と代わりに飲んであげたりする(笑)



私は新郎の父親として、ビールやワインを携えて各テーブルを廻り、お酌をしながら「息子夫婦を宜しくお願いします」とご挨拶していたのですが、途中からこの雰囲気の中で何をしてんだろうとそのこと自体に違和感を覚え、これは私ら家族も会場の皆さんと一緒に酒宴を楽しんで、皆さんと一緒に二人を祝福した方がいいなと思うようになっていました。

そして、同じく挨拶回りをしていたカミさんにそのことを伝え、兄貴夫婦を気遣っていた弟と妹にも「お前たちも挨拶回りはもういいから、食事と酒と雰囲気を一緒に楽しみなさい」と促しました。


私ら家族はテーブルに戻り、着席して遅ればせの食事と酒を楽しみながら、息子の友人たちが徹夜で作ってくれたというDVDを見ては感動し、新婦のお友達が用意してくれたというDVDを見ては爆笑し、息子夫婦が作成したという幼い頃からの写真集を見てはウルウルし、その会場の温かい雰囲気に、この幸せな時間がいつまでも続いてくれたらいいのにと思いながら感慨に耽っていました。

すると、この日郷里から20人以上来てくれていた息子の友達が入れ代わり立ち代わり私のもとに「お父さん おめでとうございます!」と酒を抱えてやって来るのです。

幼い頃からよく知る小中時代の友達は
「オレ お父さんに庭で野球教えてもらいましたよね またやりてぇな~」
「サッカーの送迎ではいつもお世話になりました!」
「親父さんに悩み聞いて欲しいんで 今度遊びに行ってもいいっすか?」

面識のなかった高校時代の友達も
「初めまして! あいつとは同じサッカー部で すっごい世話になりました!」
「自分 あいつに何回も助けられました もう今日は最高に嬉しいっす!」

立派になった彼らと何度も握手を交わし
私の感慨はこの時点で完全にピークに達していました。

私は常々子どもたちに、友達は財産だから本気で大事にしなさいと諭してきました。

長男が高校を卒業して東京に出てから8年になりますが、この日息子が親友と判を押す彼らの、こいつのためなら何でもするという若者らしい姿を目の当たりにして、間違いなく親父が伝えたかったことを全うしてくれていると嬉しく思いました。

そして息子が築いてきたその世界は、親の支配を離れ、素敵な伴侶と魅力ある親友らとともに、彼ら自身が自らの力で育んだ素晴らしい世界であると感激しました。

「親は無くとも子は育つ」を、まさか息子の結婚式でこれほど強く感じさせられることになるとは、本当に素晴らしい想定外の贈り物をいただきました。




「あとはアドリブで行かせてもらいます…

人はその友達を見ればその人となりが分かると言われます

私はこれほど多くの…粋で優しいそしてバカな友達を持つ息子を誇りに思います!」


…震える声で言い放ったこの言葉以外
何を話したのかは覚えていません…(^^;)

おめでとう! 私らみたいに幸せで楽しい夫婦になりなさい



2013年6月2日

孫の教育 誰が見る?

「ちょっとちょっと ウチって今貯金いくら位あるの?」

毎度のことだがカミさんから唐突な質問(汗)

「な、、なに 突然?」

「1,500万円くらいないの?」

「せ、、せんごひゃくまん~~? そんな金見たこともないわ!」

「だって今なら孫に1,500万あげても税金かからないんでしょ?」

そう言って情報元のB級週刊誌をワタシの前に差し出した

「あのさぁ その濃い字のとこだけじゃなくて
記事の中味をちゃんと読みなさいね…」

孫というワードにやたら敏感な新米婆ちゃんだけに まあ仕方ないか(笑)



さて、先月平成27年からの相続税改正の話題を書きましたが、その相続税増税の抜け道のように創設された「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という長い名称の制度がこのところ結構話題を呼んでいます。

簡単に言うと、お爺ちゃんやお婆ちゃんが、自分の孫に今後かかるであろう学校などの教育資金を、一度に1,500万円まであげても税金はかからないということです。


この非課税制度をざっくり整理すると

30歳未満の居住者が、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)から自らの教育資金の一括贈与を受ける場合、1,500万円までは贈与税を非課税にするというものです。

父母から子へのお金の一括贈与というのはあまり現実的ではないので、祖父母に目が向けられて、巷では「孫への教育資金の非課税制度」などと紹介されています。

贈与を受ける子、孫、ひ孫の年齢は、上限30歳未満と規定されているだけなので、産まれたばかりの赤ん坊でも対象になります。

教育資金とは、学校教育法上の幼稚園から大学、大学院、専修学校、各種学校の入学金や授業料等の学校教育費が対象になります。また、学習塾やスイミングスクールなど習い事の為に支出する資金も500万円までなら非課税とされます。

お金を贈与する方法は、贈与者が信託銀行に資金の管理を任せる契約を結んで、贈与する資金を一括払い込む方法が主流のようです。今のところ、三井住友信託、三菱UFJ信託、みずほ信託、りそな銀行の4行が「教育資金贈与信託」という専門商品を積極的に売り出しています。

信託銀行のほか、贈与者と被贈与者との間で贈与契約書を作成したうえで、銀行や証券会社に専用口座を開設して教育資金を管理してもらうこともできます。金融機関にしてみれば一時に多額の資金供給を受けることになるので、今後様々な専用新商品が売り出されるのではないかとも言われています。

贈与の手続きとしては、教育資金として支出した領収証などの証明書類を契約した信託銀行等に提示して、それと交換に資金の払い出しを受けることになります。

ということは一旦自分で費用を支払わなければならないので、これは使い勝手の悪いデメリットになると思われます。また、領収証等の発効日から1年以内に手続しなければ非課税措置が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

現在、三菱UFJ信託だけは先行払い出しが可能なようです。但し、こちらの場合は領収証などの証明書類は払い出した翌年3月15日までに提示することと規定されています。

なお、贈与を受けた者は、資金の預入時に「教育資金非課税申告書」を税務署に提出しなければなりませんが、これは契約銀行等経由で届け出されているようです。


また、この制度には注意しなければならない点があります。

贈与を受けた者が30歳になるまでにこの資金を使いきれなかった場合、要するに信託口座等に資金が残っている場合は、その残った額に対して30歳になったその年に贈与税が課せられてしまいます。

例えば、1,500万円まで非課税だからととりあえず1,500万円一括贈与したはいいけれど、贈与を受けたお孫さんがたまたま大学進学せずに、実際に使った教育資金が仮に500万円だけだったとすると、1,000万円は通常の贈与を受けたことになるので、今の税率で約230万円の贈与税を支払わければなりません。

従って、実際どれ位の教育資金が必要かを検討して贈与するのが肝要です。


もともと親や祖父母が子どもや孫の学費を負担しても税金なんか払った人などいないと思いますが、それにもちゃんとした法的根拠があります。

相続税法第21条の3で「扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は非課税とされているのです。この扶養義務者相互間という中に「父母、祖父母から子や孫へ」という関係が含まれています。

今回創設された教育資金の非課税制度の大きな違いは、21条の3の贈与は成長の過程でその都度教育資金を負担(贈与)するのに対して、将来的に生ずるであろう教育資金を現段階で一括して贈与できるところです。

例えば、預貯金を数千万円保有している祖父が、自分の孫5人に対して教育資金として1人1千万円ずつ一括贈与すれば、贈与した時点で合法的に5千万円の相続財産を減額することができるわけです。

今年4月にこの制度が創設された時点では、ある一定の富裕者層のための相続対策で、金融機関に管理を任せるなど手続きも何かと面倒だからあまり需要はないだろうと思っていましたが、前述した信託銀行の積極的な営業姿勢もあり、現在ではその問合せ件数もかなりのペースで増加しているそうです。

それもそのはずで、この新制度は平成27年末までの時限立法となっており、贈与できるのはこの2年間だけなのです。状況によっては延長されるかもしれませんが、基本的には実質あと1年半が期限となります。

いずれにしても前回の相続税同様、すべての人が対象となるわけではありませんが、将来的に相続税の心配がある方で、特に預貯金を多額に保有されている方は、ちょっと頭に入れておいてもいい制度かと思います。




「それじゃ ウチのお爺ちゃんがあたし達の孫に贈与しても大丈夫なの?」

一通り説明したらカミさんが喰いついてきた

「ああ お爺ちゃんも直系尊属だからOKだね」

「それなら 1千万位もらっちゃおう もらっちゃおう!!」

「あかんあかん そんな金ホントにもらったら
オヤジである息子がぶったるんで仕事しなくなるわ」

「あ… それもありかもね…」


そうです 教育資金という大義名分はともかく
なんでもかんでも金出しゃいいってものではありません