2013年4月30日

相続税なんて関係ない?

「ねえねえ ウチは相続税なんて関係ないよね?」

毎度のことだが
テレビを見ながら晩酌していると
風呂から上がったカミさんが唐突に訊いてきた


「ウチ? あははは まるっきり関係ないね」

「でも何だか再来年から税金払う人が増えるんでしょ?」

これも毎度のことだが
情報源は週刊誌か昼の情報番組か(笑)


「ああ 改正があって非課税の枠が縮小されるから
結果的にそういうことになるね」

「へぇ~ それでもウチは関係ないんだ」

「……言いたいのは そこ?」



さてさて、皆さんは相続税というとどんなイメージをお持ちでしょうか?

おそらく財産をたくさん持っているお金持ちの人だけが納める税金というイメージが強いのではないでしょうか。

ご存知の方も多いと思いますが、相続税には基礎控除という非課税限度額が設定されており、現行では【5千万円+1千万円×法定相続人の数】と決められています。

従って、ご夫婦と子供二人の四人家族でご主人が亡くなった場合

5千万円+1千万円×3人(奥様と二人の子ども)=8千万円

これが基礎控除額となり、被相続人(亡くなったご主人)の財産の合計金額がこの8千万円に満たなければ相続税はかからず、税務署への申告も必要ありません。

土地や建物などの不動産は時価ではなく相続税独自の評価額(一般的には時価より低い金額)で計算されるので、土地の値段が高額でない当地長野県のような地方だと、財産が自宅の土地建物と預貯金1千万円程度なら、家族構成にもよりますが、ほとんどの場合基礎控除額の範囲内で相続税がかからないのが現状です。

また、そのマイホームのための住宅ローンがあれば、その借入残高を差し引けますのでさらに財産の価額は少なくなります。


ところが今年平成25年度の税制改正で、この相続税の基礎控除額が4割縮小されることになりました。

実はこの改正は数年前から提起されていたのですが、昨年までは見送られてきた法案でした。それが今年いよいよ国会を通り、平成27年1月1日以降に発生する相続から適用されることになったのです。

基礎控除が4割縮小ということなので、5千万円が3千万円に、1千万円が6百万円にそれぞれ減額されるわけです。ですから先ほどの四人家族の場合だと

3千万円+6百万円×3人=4,800万円が基礎控除額ということになります。

それでも我が家のように、財産が自宅とスズメの涙ほどの貯金しかないのであれば、まだ相続税の心配はしなくても大丈夫なのですが、一つ確認しておいた方がいいのが生命保険です。


被相続人が保険料を負担していた生命保険金も相続財産となります。この生命保険金には先の基礎控除とは別枠で生命保険控除というものがあり、その控除額は法定相続人数×5百万円と規定されています。

先ほどの例で亡くなったご主人名義の生命保険金を仮に6千万円受け取った場合、相続財産となる保険金は、6千万円-5百万円×3人=4,500万円になります。

こうなるとやや高額な保険契約をされている方は少し気になりますね。

ただ、一般的に生命保険金の受取人には配偶者を指定しているケースがほとんどかと思います。相続税にはやはり基礎控除とは別枠で配偶者控除というものがあり、相続税計算の中では最も大きい1億6千万円という控除額が規定されています。

要するに配偶者が相続する財産は1億6千万円まで税金が課されないということです。よって生命保険金も配偶者が受取人に指定されていて、その通りに配偶者が保険金を相続すれば、ほとんどの場合この配偶者控除の枠内で収まるのではないかと思われます。

注意が必要なのは、生命保険金の受取人に配偶者以外の親族を指定している方です。死別や離婚をされて配偶者がおらず、法定相続人がお子さんとか親御さんだけというケースでは、あまり高額な保険金が給付されると、そのために相続税の申告が必要となり、税金を納付しなければならない場合も生じます。

気になる方は一度契約内容を確認しておくことをお勧めします。

今回の基礎控除の4割縮小という改正は、相続税の課税ベースの拡大が目的と言われています。確かに都会に目を向ければ、一般家庭でも持家と多少の預貯金があれば、相続税の対象となる人がかなり増加するものと考えられます。

これまで相続税の申告納付は、亡くなった方全体の4%(約5万人)程度と言われてきましたが、この改正によって6%(約7万人)に増加するだろうという国の試算が報告されています。

平成27年からの適用なのでまだ2年近くあるとは言え、相続税対策というのはそんなに短期間でできるものではありません。

また、ここではざっくりと説明しましたが、詳細に至っては相続税という法律自体非常に難解なので、今回の改正でちょっと気になるなぁという方は、是非一度お近くの税理士さんに…もとい、ウチの事務所までお気軽にご相談下さい。




「なら ウチだって保険金で相続税出るんじゃない?」

「オレの保険? あれもう払い済みで
 死んでも5百万しか下りないよ」

「エエ~~!! 5、5、5百万~~?!」

カミさんの顔色が例えようのない色に変わった

「ちょっと~ それどういうことよ?!」

「どういうことって
 ウチは子供もみんな社会人になったし
 オレが死んでも金なんか要らんでしょ」

「金なんか要らんって…
 あたしはどうなるのよ…」

「お前は年金出るし
 子どもたちが面倒見てくれるだろ」

「そんな… 無責任な…(泣)」

「無駄なお金は持たない方が身のためだって」


ホントは1年更新の掛捨保険があるので全部で3千万円ですが
安心するといけないのでカミさんには内緒です(笑)