2012年6月30日

運命の出逢い


「父の日 おめでとう!」(一o一)/

久しぶりに実家に来た次男坊が『ワンピース』六十六巻を私に差し出した

「普通 “おめでとう” じゃなくて “ありがとう” だ」 "d(-。-;) 

「そうなの~ じゃ“ありがとう” ってことで 」( ̄0 ̄)/

「てことでって… で? これがその贈り物ってことね」(・_・)?

「うん… あれ? ひょっとしてもう買っちゃった?」w(゚皿゚;)w

「いや買ってない買ってない なかなか粋なプレゼントだな…」(^-^;)


先月寂しげに触れた今年の「父の日」は 長男からの感謝メールと
次男からの大人気アニメ最新巻一冊を貰って静かに幕を閉じた

何の音沙汰もなかった娘は…仕事が忙しいということにしておこう・・・(T_T|||)



さて、そんな風前の灯のような父の日のことはどうでもいいのだが、実はここ2~3ヶ月、粋なプレゼントをくれた次男坊が、彼にとっては晴天の霹靂のような事件に次々出くわしながら懸命に生きていた。


そのしょっぱなは4月の初旬、私に話があると実家にやって来た息子が神妙な顔つきでこう切り出した

「お父さん 俺 会社辞めた…」

小さな頃からウチの子どもたちがこういう雰囲気のときは、私ら親にとって大体悩ましい話だということは流石に見当はついていたが・・・

次男は高校を卒業してすぐに石川県に本社がある企業に就職し、その支店となる県内の工場で自販機の修理や保守、設置などの業務に従事していた。

彼はその会社で4年間、私の知る限り仕事自体は真面目に頑張っていたはずで、昨年は同工場で唯一優秀技能社員とやらに選ばれ、本社から召集を受けて表彰され、慣れないスーツ姿で社内報に載ったり、今年の3月には業界では難関だという「自動販売機調整技能士」という国家試験にも受かったばかりだった。

その状況で彼が何故辞めなければならなかったのかは相手もあることなのでここでは割愛するが、彼の心情を察して余りある事情があったことは息子の名誉のために付言しておきたい。

ただ、理由はともかく私はこの件で一つだけ息子に苦言を呈した。

「お前だけの人生なら会社を辞めること自体どうこう言うつもりはない。でもお前はもうすぐ守るべき家族を持とうとしてるんだからもう自分一人の人生じゃないんだよ。お前が築こうとしてる家庭にとって一番大きなウェイトを占める男の仕事に自分の事情で空白を作っちゃいけない。だから、次どうするかを何も決めないで辞めてしまったのはお前の判断ミスだ。せめて『辞めた』じゃなくて『辞めたい』って状況でここに相談に来て欲しかったな。」

すでに退職届を受理されてからあれこれ言っても仕方ないのだが、息子にとっては仕事を辞めるという経験も初めてだったので、一事が万事、オヤジとしては今後の人生の肥やしにして欲しいという思いからの一言だった。

「・・・」

「今から騒いでも仕方ない 必死になって就活するしかないな… それから失業保険なんかあてにすんなよ  今のお前はそんな悠長なことやってる場合じゃないからな」

「うん 分かってる そうするつもり」

「まあ 厳しいだろうけど頑張れ!」


そうしてこれまでの技術畑の仕事とは真逆の営業職に就きたいと、営業の中途採用を募集している会社を探して3社ほど面接や試験を受け、その結果を待っていたゴールデンウィーク直前のある日、再び私に話があると実家にやってきた神妙な表情の次男からまたまた衝撃の事実を聞くことになった。

「お父さん 赤ちゃんできたみたいなんだよね…」

息子は昨年から結婚を約束した彼女と、彼女のご両親の承諾をいただいたうえで一緒に暮らしていた。
(2011/8月 「けじめ」 http://dairicolum.blogspot.jp/2011/08/blog-post.html)

彼女は息子が就職して間もなく友達を通して知り合ったという同い年のとても可愛いお嬢さんで、息子とはもう4年の付き合いになるが、2年ほど前からお互い結婚を意識していたことはもちろん知っており、私ら夫婦とも一緒に旅行や食事に行ったりしていたので、今ではすっかり気心の知れた間柄となっている。

二人は仕事をしながら二年くらいお金を貯めて、来年あたりに結婚式を挙げるつもりでいたようだが、若い男女が一つ屋根の下で暮らしていれば、こういう事態が起こるだろうことは同棲を許した段階で互いの両親もある程度覚悟していたことではある。

「とりあえずおめでとう…で、何ヶ月なの?」

「二ヶ月くらい…もちろん産みたいって言ってるんだけど…」

「当り前だ!! でもよりによってこのタイミングとはなぁ…」

そう彼らにとっては確かにタイミングが悪過ぎた。息子としてはすぐにでも先方のご両親に報告すべきところだが、何しろ現在無職の身で何を言っても何の説得力もないことは自明の理だと思った私らは、流石に今回だけは採用の結果が分かってからご両親に報告した方がいいだろうと息子に諭していた。

ところが、息子はまだ就職が決まっていない5月半ばの日曜日、私らには何も告げずに彼女のご実家に赴いて今回の件を報告し、正式に娘さんと結婚させて欲しいと頭を下げてきたという。そして無職である状況もきっちり話したうえで、ご両親の承諾をいただいたと連絡を受けた。

どうやら彼は自分の子を身籠った彼女を見ていて、何も前に進まない状態を一番不安がっているのは彼女自身だと思いやり、何時どうなるか分からない自分の仕事のことでこれ以上話を先延ばしにするのはよくないと考えたようだ。そして、一刻も早く現状を正直に話し、誠意を持って今後の覚悟を話すことで自分を信じてもらい、二人のことを理解してもらおうと決意しての行動だったのである。

結婚は人の縁そのものであり、その運命の出逢いは年齢に関係なくやってくるものだ。それを掴むか見送るかは人それぞれだが、彼ら二人は18歳のときに出逢った縁を運命の出逢いとして受け止め、真剣に育んでいこうとしているのである。きっと先方のご両親も、何の駆け引きもない息子の真直ぐな思いを受け入れて下さったのではないかと感謝している。

私らも、今回だけはそんな息子を少し見直すことができた。


そしてこの6月初旬、息子の気持ちが通じたのか、1人採用の募集に5人が面接を受けたという医薬品の販売会社から内定通知が届いたと報告があった。そこは息子も一番行きたかった会社だと後日言っていたが、数日間の研修を経て正社員となり、今現在は一営業マンとして毎日はりきって勤務しているようである。

色々と順番は前後してしまったが彼らにとってはこれからが本番だ。今度は彼が父親として、家族のために慣れないスーツ姿が板に付くまで仕事をやり倒し、ウチのような…? 明るく素敵な家庭を築いて欲しいものである。


「18日に入籍してくるから ここお願いします」

婚姻届を持ってきた息子が証人欄の記入を求めてきた

「父の日の次の日か…ところでいつ頃産まれるんだ?」

「11月の終わりか12月頃だね」

「そうか…あっという間だぞ 大事にしてやれよ」

「分かってる!」

幸せになれよ・・・

そしてどうやら私とカミさんは 今年中に爺婆になりそうだ